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【悲恋 恋愛小説】

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絆 -see you again--1

夢とか希望とかバカらしいと思う。蒼(そう)はずっとそう思って生きてきた。
高3の進路相談で将来の夢など聞く方が間違ってると思う。
先生に向かってそう言ったらこってり2時間も説教された。すでに日も暮れて夕方である。そして現在は12月…高3のこの時期に進路も決めず、勉強してないのなど俺ぐらいだろう。
「暇だな〜」
誰にともなく蒼は言った…とりあえず寒いので寒くなく、かつ時間潰しが出来そうな所がないか考える。
「病院の待合室で本でも読むかな…。」
普通ならあり得ない発想だが、あそこはなかなか静かで本を読むにはもってこいの場所だと思う。
選択肢的には図書館もあるがこの時期は知り合いが多い上に遠いので面倒だった。
途中の本屋でひいきの作家の小説を買うと待合室の一角のイスに腰をおろした。どうせだから面会終了時間までゆっくりしようと思う。

「お兄さん。」
何時間たっただろう不意に誰かに声をかけられた。俺はその声に従って顔をあげると女の子が1人ぽつんと立っていた。
「何読んでるんですか〜?」
初対面の相手に臆せもせず声をかけてくるとは驚きだが女の子がパジャマ姿の所を見ると、この病院に入院してる子なのだろう。見た感じは13〜15歳の子で肩まで伸びた黒髪がよく櫛が通されてサラサラしてる。素直な感じの子だった。
「何か用か?」
「だから本のタイトルを聞いてるんですけど〜」
そういう意味じゃない。という言葉を飲み込んで俺は立ち去ろうとする。こういう輩とはかかわり合いにならないのがならないのが吉だ。
「何で行っちゃうんですか〜?」
無視無視。
「私とはどうせ遊びだったんですね!」
いきなり訳のわからないことを女の子は叫びだした。
「酷い…私はこんなに大好きだったのに…」
周囲の人間が騒ぎ始めた。
これは不味い…。このままでは俺は悪者扱いされてしまう…。
俺はきびすを返して女の子の元に戻るしか方法がなかった。
「で、何か用でもあるのか?」
俺はおもいっきし不機嫌そうな声で言ってやったが気にもせず話をしてきた。
「暇だったから話し相手になって貰おうと思っただけですよ〜」
そのためだけにあの芝居をうつとは…
「私、唯崎 沙夜って言います。」
「最上 蒼だ。」
「そう?どんな漢字?」
「あお…草冠に倉と書く」
「じゃあ今日からあおちゃんねっ!403号室にいるのでよろしくっ!」
俺は適当に返事をした
「コラッ!唯崎さん病室出ちゃダメでしょっ!」
「あちゃぁ…見つかっちゃった…また今度ねっ!」
そういって女の子は病室に戻っていった。
「あなたあの子の友達?」
「さっきナンパされたんですよ…」
冗談混じりに言うと看護婦は苦笑いした。
「あの子あんまり友達がいないみたいだから仲良くしてあげてね。」
それだけ言うと看護婦は颯爽と立ち去ってしまった…。
「『また今度』か…」
また会える保証などないのにそう言ったのは何故か、俺はそれの理由を全く考えてなかった…


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