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【悲恋 恋愛小説】

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絆 雪の降る町で…-7

雪の降る町で…
翌朝、昨日と同じように、朝日の眩しさで目が覚める。
とりあえずトイレへと立つ。廊下でパジャマ姿の香澄とすれ違った事以外をのぞけば、昨日と同じだ。
とりあえず用を済まして一回の食卓まで降りる。
「おはよ〜」
「おはようございます。」
香澄と巴さんが挨拶をしてくる。
「おはよう。」
昨日と同じ時間だが偉く香澄がゆっくりしている。
「今日は日曜日か…?」
「うん。そうだよ。」
学校に通ったりしなくなるとどうも曜日感覚が無くて困る。
「蒼君。今日リハビリも兼ねて買い物行かない?」
「ん?」
「だってもう大体一人で歩けるからさ…いいかな〜とか思って…。」
「あぁ。じゃあそれならついでに一緒に買物頼まれてくれませんか?」
巴さんはメモを取り出して、サラサラと品名を書いていく。
断る選択肢はなさそうだな…。
しかし、香澄はとても嬉しそうな顔をしてるのでいいかなぁ…。と思った。
「たまには悪くないな…こういうのも…」
一人で部屋の中に籠もっていると沙夜の事ばかり思い出してしまうから…という言葉は口にはださなかった。
それを聞いた香澄は安堵と嬉しさが混ざったような表情をしてこちらを向いていた。
俺は頭にポンと手を乗せ、ありがとうっと言った。
それからしばらくして、俺たちは手を繋ぎながら歩いて行った。
全ての用事を済ませると、すでに夕方になっていた。
「今日は付き合ってくれてありがとう…。」
「ああ。」
「急いで帰ろうねっ!お母さんが待ってるから。」
香澄がそう言いながら走り出した。
「おい、コラッ!けが人に荷物持たせて一人だけ先行くなっ!」
「やだよ〜。悔しかったら追いついてみろ〜」
「香澄っ!」
俺はスローモーションのように見えた、一直線に香澄に向かっていく車。路面の凍結でスリップしてしまったのか運転手にも焦りが見えた。俺は荷物を捨てて走り出そうとして失敗した、まだ、足が完治してなかった。
イヤだっ!もう失いたくないっ!なぜ俺から取り上げるっ?俺なんかどうなってもいい。だから、香澄を──
ガシャーン
ドサッ
一拍遅れて重い物が落ちる音人の落ちるようなそんな音。
「蒼君っ!蒼君っ!」
香澄が呼んでいる…
助かったんだな…
そんな場違いなことばかり考えていた。そうしてる間に俺から流れ出た血が、雪を少し溶かし、赤く染めた。
「今、救急車呼ぶからっ!」
そう言って近くの電話ボックスに走り出そうとする香澄を、手を掴んでやめさせる。
「もう助からない…だから、最後に話を聞いて…」
「そんなこと言わないでよぉっ!今助けるからっ!」
香澄は傷口を手で押さえて止血を試みるが、ただ、香澄の手を赤く汚しただけだった。
「香澄の…おかげで沙夜の事…楽になった…嬉しかった……
このまま…幸せになれると思ってた……」
「やだよ……死なないでよぉ…」
香澄が泣いている…。
「香澄のおかげで俺、救われた。いきる気力をもらった…香澄は…沢山の人を救えるよ…だから…これからも頑張ってね…」
イヤイヤと香澄はだだをこねたように首を振る。
意識が遠くなるでもまだ伝えなきゃいけないことがある…。香澄がこの先俺と同じ道を辿らない為に…
「香澄は…悪くないよ……これは俺が勝手な行動をして…出た結果だから……」
沙夜……もういいよね…?許してくれるよね……?
あ……思い出した…沙夜の夢は…
「……言い忘れてた…今まで、言えなかったけど…俺、香澄のこと……大好きだった…だから泣かないで…俺はずっと香澄の幸せを祈ってるから…」
香澄の涙を赤く染まった手で拭った。
その手は冷たくてそれ以降動かなかった。
「蒼君…」
最後に香澄が呟いた名前だけはきいていた。

さよなら…香澄…

夢は…『私の大切な人が幸せになるように…』


蒼君が死んで…テキパキとことは進んだ。
すぐに遺体は実家に送られて、お葬式もするのかすらわからない。
お母さんは別段表情には出さなかったけど、すごく…悲しんでいた。
そして、私は…心理学を学び始めた。
一週間…涙が止まらなかった…。
けど、蒼君の言ったこと…無駄にしないために。これ以上、蒼君みたいな人を出さないために。
さよなら…


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