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【悲恋 恋愛小説】

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絆 雪の降る町で…-2

雪の降る町で…
「目覚めましたか?」
白い清潔感の溢れるベッドに俺は寝かされていた。
「ここは…?」
「私の家です。」
そう声のした方向を見ると、赤いマフラーをくれた女の子がイスに座っていた。
「あのあと心配で見に行ったの、そしたら案の上って感じで…」
「なぜ助けた…」
「え…?」
「何で助けたんだよ!」
俺はギュッと布団を握りしめ言った。
「俺はあそこで死にたかったんだ!なのに…」
「でも…」
女の子が俺に触れようと、手をのばした皮膚が触れた瞬間、指先から体温が伝わった瞬間、俺は動いていた。
「俺に触るな。」
自分でも恐ろしいほどの声音で言い。女の子を突き飛ばした。
「ッ…」
声にならない悲鳴をあげ女の子は床に倒れた。それでもどうにかして立ち上がると小さな声で「ごめんね」と言って部屋を出ていった。
耳が痛くなるほど部屋は静かになった。やがてノックがあり別の女性が入ってきた。見た目からして女の子の母親だろう。茶色がかったウェーブのついた髪が印象的な人だった。
「こんばんは。」
ベット際に座りおれと目線を同じにしてから挨拶をしてきた。
「私は織端 巴っていいます。さっきあなたが会ったのが娘の香澄です。……話せるかな…?」
「あぁ…。」
優しい口調だった。相手のラインを越えない話し方…。
「名前は?」
「最上 蒼…」
「歳は?」
「19…20歳かもしれない…忘れたよ…」
ホントのことだった。自分の誕生日なんかどうでもいいものだから。
「親御さんはいるの…?」
「勘当された。」
2年前沙夜の死んだ後。
進学も働きもせずフラフラしてた俺は親に勘当された。
「そう…」
「もういいですか?俺、死にたいんです。」
「そういうわけにはいかないわ。あなたを今放り出したら香澄がどうするか解らないから…それに目の前の命を死ぬと解って放り出せないわ。」
「気にしないでください。俺になんか会ってないということにすればいいんです。」
「そうですか……でも私の家にいる限りは言うことを聞いてもらいます。」
その言葉には反論を許さない強い部分があった。
「ともかく体が直るまで外出、脱出は禁止ですから。どうせそんな体じゃ無理だと思うけどね…」
そう言って部屋を出ていった。
追いかけようと立ち上がったとき足の感覚がないことに気付き、そしてベッドから転がり落ちた。
「大丈夫っ!?」
大きな音を聞きつけたのか香澄が飛び込んできた。
「ダメだよ、安静にしてなきゃ…軽い凍傷起こしてるんだから…」
そう言って香澄は俺に手をのばそうとした、しかし、手は途中で止まった。
「あっ…ごめんなさい…。」
俺はその声を無視して、ベッドにあがろうとするが、足の感覚がないとなかなかうまくいかない。俺がベッドから落ちる度に香澄は手を差し伸べようとするが、さっきのことを考えてか、手助けをするべきか決めかねているようだ。
「…悪いが手を貸してくれないか…?」
そう言うと香澄は素直に手を貸してくれた。しかし、人の手が離れるまで、俺の怯えが無くなる事はなかった。あの時の様にこの手が動かなくなり、冷たくなってしまうのではないかと、気が気でなかった。
「大丈夫…凄い汗かいてるよ…?」
「ああ、大丈夫だ。」
「無理はダメだよ…」
香澄はそう言って俺に布団をかけ直すと、「おやすみ」と言って香澄も部屋を後にした。


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