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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第19章-23

「…ただいま。」

私を待っていた家の灯りは、それだけで温かかった。私の顔に浮かんだ笑顔は、それほど多くを語っただろうか。

「…よかった。」

飃が、そう言って私を抱きしめた。とたんに懐かしい香りが私を包んで、深いため息をつく。

「あの娘は?」

「あと四日もすれば、帰れるって。」

居心地の良い飃の腕の中に、いつまでも埋もれていたいと思う。筋肉質で、女の体に比べればずいぶんと硬いようなその体が、たまらなく優しいと思った。

不意に、どれだけ長い間こうして抱きしめあうことが無かったか思い出す。飃は、少しだけ体を離してから、私の頬に触れた。温かく、大きいその手に頬を預けて、私は目を閉じる。

全てが愛おしい。

閉じた目に、優しい口付けが降りてきた。



理性を焼き滅ぼしかねないほど性急で、強力な衝動に、私たちはあえて逆らった。

一つ一つの動作に、私は意味を見出すことが出来た。言葉では伝えられない喜びを教えるために口づけをして、触れ合うことの出来なかった時がいかに長かったかを思い出すために身体の線をなぞる。

幾分か痩せてしまったお互いの身体と、新たに増えた傷跡を癒すように、優しく触れ合った。

後ろから耳を甘噛みされる。私は、小さくあえぎながら器用に笑った。飃が私の髪に顔をうずめて、匂いをかぐ。そんな小さな刺激にさえ、私の身体は波立った。言葉にならない感嘆の呟きが、ため息となって漏れる。

私は振り向いて、彼の頬を手で包んだ。

飃の目は、ギラリと光りながらも限りなく優しかった。伏せた目の隙間から、うかがう様に、からかうように私を見る。私は、その目に射抜かれてどんな表情で返しただろう。わかる由はなかった。次の瞬間には、二人とも目を閉じていたから。

飃の長い髪を持ち上げて、手のひらで触った首筋は温かかった。ほとんど熱を持ってるといってもいいほど。飃の手が、私の身体の全ての曲線をたどって降りてゆく。ざらざらしたその指先は、マッチのように私の欲望に火をともした。それは、官能の炎であり、同時に母性の灯だった。彼に強く抱きしめられ、その腕の中で壊れるほど愛されたいと思い…同時に、彼を強く抱きしめ、私の中に仕舞いこんでずっと守ってあげられたらとも思った。

肌がこすれるだけで身体が震えて、キスするだけで思考回路は溶けた。彼が私の中に入ってきたとき、多分頭の奥のほうにある、溶けた思考回路がスパークした。

「ぁぁ…!」

言葉を紡ぐことなど不可能だった。飃に何か聞かれたような気がしたけど、答えられなかった。

ゆっくりとしたリズムなのに、二人とも息があがっていた。暖かい息がお互いの肌を撫で、私たちはさらに貪欲にキスでその熱を味わった。


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