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アイしてる★☆
【悲恋 恋愛小説】

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アイしてる★☆-6

第六話
二人は観覧車に乗っていた。
(高い所、好きなんだな)
狭い空間の中には、あの日の屋上のような雰囲気が漂っていた。
「マモル、最初の頃と性格全然違う」
「!」
ちゃらんぽらんな性格はカリソメのもの。いつの間にか地が出てしまっていたのだ。そんな自分自身に、驚く。「でも私、そっちのマモルの方が好き」
カナタがマモルに微笑みかける。
(うっ・・わぁ)
どくんどくん・・っ
(どういう意味だよ・・それっ!)
今すぐツッコミたかったが、マモルのプライドと頑固さが許さなかった。
「髪も黒い方が好き。そっちの方が似合うもの。・・そっちが本当の君だよ」
「本当の、俺」
「さ、終わり。次はあそこ行くわよ」
「えぇっ!?あぁ・・」せっかくいい雰囲気だったのに、マモルは何も手が出せないまま終わってしまった。


「うわぁ・・自分がいっぱい」
二人はミラーハウスにいた。
「・・・」
初めて見る光景に、マモルは言葉を失っていた。遊園地に来るときは、絶叫系しか乗らなかったからだ。カナタは、本当にたくさんの思いをマモルにくれる。
ふと、カナタの声のトーンが沈んだ。
「他人一人ヒトリに性格を合わせる自分・・新しい他人に出会う度、増えてゆく『自分』・・。そのうちオリジナルがわからなくなり、本当の自分を見失う。自分はどんな性格をしてた?本当に好きなモノは何?自分の居場所は本当にここでいいの?自分を、どんどん、見失ってゆくー・・・」
感情のない声と不思議な空間は、感覚を麻痺させる。マモルは自分の事を言われているようで、胸がチクンとした。
悲しさが溢れてきて、どうにも止まらない。『彼』の本性が、ふっと顔を現す。
「イヤミ?」
残酷さがにじみ出る声で、さげずんだ。
しかしカナタは無視して喋り続ける。「ねぇ、楽しい?愛を売って・・楽しいの?」「オマェに・・何がわかるっ!!!」
「わかんない・・わかんないよ!だって私は・・愛していたいもの」
〔どんなに、裏切られても〕
とくん・・・・
カナタの胸に、熱いものが込み上げてきた。
瞬間

鏡に映った『自分達』が、『自分』を責めているような感覚に襲われた。
(怖い・・怖い!!!)
自分を見失いそうになったとき、鏡に映るもうヒトリを見付けた。
彼女は、泣いていた。
いつもの余裕ある強気な態度はもうそこには無く。ただ、泣いていたのだった。瞳を濡らし、真っ赤にして。両手はぎゅっとスカートの端を握っていた。・・小さな肩を震わせて、全身でマモルに訴えかけていた。
マモルは、空っぽの頭の中で一つの感情に出会ってしまっていた。もう、無視することなどできなかった。
(俺はー・・)
それは、ハジメテの感情。何物にも変えられない、大切な感情。自分がー・・諦めてしまっていたモノ。
(俺は、カナタがー・・好きだ)
・・だからこそ。
「カナタだって俺のしてること、認めてたじゃないか」
「・・・」
カナタは黙る。
「俺、気付いたよ・・本気の恋愛は、『LS』ではできない。今はこれしかないけど・・金、返すよ。だから、カナタ・・」マモルは語りかける。今まで出したことの無いような声で、抱いたことの無い穏やかな気持で。
マモルはカナタに財布の中身を渡す。
・・しかし、想いはそう簡単には届かない。
「・・こんなものっ!」ビリビリ・・ビリリッカナタは差し出されたお札を乱暴にひったくり、ビリビリに破り捨てる。
「優しい言葉で期待なんかさせないで!」
「カナタ!話を・・」
「結局皆あたしの事なんて嫌いなのよ!もういい!『LS』なんて!契約破棄よ!!あんたなんか・・・っ」
カナタの瞳からは、さっきとは倍以上の涙が溢れ出る。
そして。
カナタは最後の言葉を発する事ができずに、飛び出していった。
「待っ・・」
とっさに出したマモルの手は、カナタの手を掴むこと無く空を切る。
「・・・」
マモルは、自分の気持が伝わらなかったことにショックを受け、動くことができずにいた。
カナタのいない空間は、絶望だった。
(俺・・・)
役立たずの右手を目の前にもっていき、握り締める。ぎゅっと・・。(なんで・・?)
マモルは後悔した。自分のことばっかりで、カナタのことなど何もわかっていなかったのだ。
(・・・っ)
カナタの傷跡をかいま見た気がした。
握り締めた右手には、血がにじんでいた。


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