アイしてる★☆-5
第五話
「ぁ゛っち゛ぃ〜っ」
桜華学園は今日から夏休み。7月下旬ともなるとー・・暑い。暑い。死ぬほど暑い!!!マモルは帽子を手に、必死に自分を仰ぎ続けた。ブンブンブンブン・・・しかし来るのは生暖かい空気だけ。
(もうダメ・・死ぬ!)そう思ったとき、視界の端に自販機が映る。これぞ天の助け!・・と思った次の瞬間、目の前に一台のリムジンが止まった。
(すっげ・・初めて見た)
マモルが呆然としていると、運転手がドアを開け、中から少女が出てくる。
黒く長い髪はアップにしている。洋服は水色のワンピースだ。肩の所は紐で、可愛らしい蝶々結びになっている。丈は膝上くらいだが、そこから伸びるすらっとした足の長さで、プロポーションは良さげに見える。
(やっぱり問題は、あの童顔だよな・・。背ももう少しあればモデル並だぜ♪)
「行くわよ」
(あとはやっぱり第一に・・性格だな。。)
マモルは苦笑いしながらカナタの後に着いていった。
ガヤガヤザワザワ
「ねぇねぇ〜!ここってなに?遊園地?」
「まったくお前、ホントなンも知らんのなーっ!ここはHEVENさ」
「へぶんー?」
「来る前何度も説明しただろうがっ!ここは最近オープンした、近未来型遊園地なの!ジェットコースターや観覧車は勿論、ショッピングモールもあれば世界各国の料理店が軒を列ねてる。ホテルだってあるんだ!」
「ふあぁあ〜!凄い!なんでも知ってるんだね〜!!!」
「お前がなンも知らな過ぎるだけだろうが」(またアイツらかよ)前にも一度見掛けたことがある。マモルの噂をしてた奴だ。
(見付かったらめんどいな・・それに、契約違反だ)
以前カナタに言われた『誰にも秘密』という言葉も手伝って、マモルの商売根性が目覚める。
「カナタ!学校の奴らがいる!早くどっか入ろう!!」
「じゃーあたし、これがいい」
カナタは一心不乱に見ていたパンフレットにすっと指を伸ばす。さすがのマモルもそれには焦った。
「一番反対側じゃねーかっ!!」
(コイツ・・ホントに秘密にしたいのか!??)
心の中で不満を呟きながら、マモルはその場から退散した。
カナタの手を、引いて。
タッ
タッタッタッタッ
ダダダダダ・・ダンッ
「・・到着っ!」
ぜーはぁぜーはぁ
マモルはすっかり息があがり、肩で呼吸をしながらその場に座り込んでしまった。一方カナタはというと、白いほっぺたを紅潮させただけで全然平気なようだ。
(マジッスか)
マモルはカナタの体力に感服する。
一難去ってまた一難。カナタのウツクシサを見て忘れていた喉の乾きが、走ったことにより蘇る。しかも全力疾走したことにより、さっきより質が悪い。
(カナタも喉乾いてるよな・・)
仮にもコイビト同士なのだ。そう思い、重い腰を上げる。
すると、
「マモル」
カナタの手にはジュースの缶が握られていた。それが、真っ直ぐにマモルに向け差し出されている。
「え・・俺に?」
それはまさしく、カナタがマモルの為に買ってきたものだった。
そして。
(初めて名前、呼ばれた・・)
自分の名前がこんなに良い響きをするなんて、今まで考えたこともなかった。
「ほら」
「・・サンキュ」
マモルがそれを受け取ると、蓋は開いている。そしてその缶の口は、うっすらと赤く色付いている。
「・・?」
マモルが不思議がっていると、カナタは言った。
「それ、一口飲んだから」
「え゛っ!?」
マモルは口許ギリギリまで持っていった缶を勢いよく離して真っ赤になる。
「ねぇ、早く入るわよ」
マモルはカナタにせかされ、躊躇した右手から左手に持ちかえ、どことなく甘く感じるその液体を、飲み干した。