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アイしてる★☆
【悲恋 恋愛小説】

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アイしてる★☆-3

第三話
「もっしも〜し!桜華カナタさ〜ん!理事長の孫が授業なんかサボっていいんですか〜?」
「うるさいわよ徳野マモル。私は大学行かないからいいの」
「ふぅん」
マモルは深く聞いたりはしない。何より自分が面倒だからだ。他人のことなど知って、何が楽しいのか。
(どーでもいいし)
二人は屋上にいた。他に人影はない。真夏のむっとした空気が、さわやかな風に流されてゆく。
「・・・」
(弱ったな〜)
マモルは頭を悩ませた。カナタが何も喋らないのだ。普段なら、オンナの方から寄ってきて時間を惜しんで一言でも多く語りかけようと努力するのだ。しかしカナタは柵に寄りかかり、空を眺めている。目すら合わそうとしないのだ。
(これじゃあボッタクリじゃねぇか・・)
マモルは妙な所で律儀だった。カナタなど知る筈も無いマモルの秘密に、貸しをつけられたみたいで嫌な気分だった。
マモルが何か言おうと口を開いた瞬間、カナタが言った。
「雲」
「?」
夏空には、無数の入道雲が連なっていた。マモルは暫し我を忘れて雲を眺めた。
(こんな風に雲なんて眺めたの、何年振りだろう・・)
そしてそれから、はっとして、我に返る。
(何か話さなきゃ・・)しかしそんなマモルの小さな悩みは、一瞬にして吹き飛んだ。彼女の方を見ると、笑っていたのだ。強気な彼女の、とびきりの笑顔。その瞳からはやっぱり心はよみとれなかったけど、誰が見ても分かる、嬉しさに満ちた顔だった。マモルの冷えきった心の奥底で、とくんと小さく、何かが反応した。
もうマモルはこの沈黙が気にならなくなり、むしろ心地良いと感じていた。


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