WITH YOU...-4
嘘やろ
…なんでや
……マニアワナカッタ??
「おはよう友哉。誕生日おめでと。なんか知らんけど陸に呼ばれたから行くな。帰りに友哉が好きなチーズケーキ、ちゃんと買ってくるし。行ってきます」
そう言うと返事のない友哉に軽くキスをして沙樹は病室を出た。
あれから友哉はずっと眠り続けている。
最悪の事態こそ免れたものの、いつ目が覚めるのかは全くわからないと医者が言っていた。
「お待たせ」
「おう」
駐車場に待たせていた陸に声をかけ車に乗り込む。
「……」
陸はあの日以来何も言わずに沙樹のそばにいてくれる。
一度、ウチは陸に逃げてまう。都合よく利用してまう。やからもうほっといて。と、冷たく言ったことがあった。
何となく陸の気持ちは知ってたから。
それでもなにも言わず支えてくれていた陸を、利用したくない。
裏切りたくない。
そんな気持ちから出た言葉を陸は聞こうとせず、でもなにを言うわけでもなく、ただそばにいた。―こいつは天性のお人好しやな。
と、思わず笑ってしまった。
「着いたで」
車を降りると、白い小さな教会だった。
「今更神頼みで連れてきたんとちゃうで!?まぁ中入って」
ちょっと慌てる陸に笑いながら、私は協会の扉を開けた。
「……!!」
思わず振り返ると満足げに陸が笑っている。
「友哉がな。事故の一週間前ぐらいに今日お前をここに連れてこいって」
胸が締め付けられる。
扉の向こうには神に永遠の愛を誓うための場所が広がっていた。
「アイツ自信満々で俺に向かって練習してたで。人生で１回しか、沙樹にしか言わへんとか豪語したくせにな」
幸せと寂しさがいっぺんにこみ上げる。
「…なんで泣いとんねん。ハハッ。沙樹は泣き虫やのぉ」
「だ…って…」
「笑っとけ。お前は絶対喜ぶって、アイツはそれを楽しみにしてたんや」
〜♪
携帯の着信音がなり、涙で視界がはっきりしない私は画面も確認せずに電話に出た。
「もしも…っし…」
『ハハッ相変わらず泣いてんのか沙樹』
嘘や。ありえへんありえへん。まだ目は覚めてないはずやで??
「……???」
『おいおい。愛する俺の声も忘れてしもたんかぁ??あ!!まさかお前陸と!?』あぁ…友哉や…帰ってきた…ウチの友哉…
「…アホ!!何言うねん!!ウチが…ウチがどんな…」
『うん。ごめんな沙樹。待たせたな。』
優しく返事が返ってくる。
「…とも…やぁ…」
その名前を聞いて驚きながらも状況を理解し安心した陸は沙樹を教会の奥へ促した。
『今、おるんか??教会に。』
「うん。うん、おるょ。」
神父の立つ台の前まで来て陸は神父に状況を説明した。
『１回しか言わんから。な?沙樹。泣きやんでちゃんと聞いとけ』
神父は笑顔で沙樹を迎える。
『俺は沙樹を世界で一番愛してる。俺の夢は沙樹と２人で、世界で一番幸せな家庭を作ることや。その夢に付き合ってほしい。沙樹…俺と結婚して下さい。』
「…はい。…嬉しいよ友哉」
『いっぱい苦労かけるけど…もう不安で泣かせたりせぇへんから』
「うん…うん。幸せに」
『あぁ。幸せになろや』
パチパチパチパチ…
神父と陸が拍手をあげる。電話の向こうからも聞こえてくる。
看護士や医師だろう。