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WITH YOU...
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WITH YOU...-1

「お待たせしましたぁ」
満面の笑みで注文されたドリンクを差し出すと客も笑顔で礼を言い、再びリールに視線を戻す。

ここはスロット専門店「kingofSeven」
私、沙樹はこの店のコーヒーレディーとして働いています。

「沙樹サンこれどうするんですかぁ」
と、今日初日の研修を受けている絵梨チャン。
「ぁ〜今はえぇよ。休憩行こかぁ」
休憩中の札を立て、スタッフ用階段から休憩室へ向かう。着いてすぐにタバコを吸いながら絵梨チャンにたずねる。
「どぉ??最近お客さん少ないからあんまりおもろないけど…がんばれそ??」
「はい!てか、沙樹サンお客さんとめっちゃ仲良いですよねぇ」
絵梨チャンもタバコに火を付けながら続ける。
「ウチ人見知りするから仲良くできるか不安です」
自分から打ち明けるあたりが人見知り感じひんけどなぁ…と、苦笑しながら私は答える。
「まずお客さんの注文覚えてあげるねん。この人はコーヒーにミルクだけ〜とかな」
「…それって意味あるんですか?」
「ん〜覚えてあげるとな、いっぱいおる客ん中でこの子は自分を覚えてくれてるんや。って思いはって、すごい喜んでくれるねん。まぁ1日2日じゃできんけど」
「う〜ん…でも正味コーヒー1杯250円でしょ?対して量多い訳ちゃうし、ウチやったら絶対自販機で買うわぁ」
買ったことある人ならわかると思うけど、実際高い…メダルとか玉でも買えるから手軽に感じるんやけど。
「高いんはな、ウチらが笑顔で売るからや。自販機が売るんはドリンクだけやけど、ウチらは笑顔も売ってんねん。そやし、笑顔だけは忘れたアカンで」
まぁまだ入ってすぐの子に言うてもなぁ…
はぁ…初日の子に語ってどないすんねん…
考えながら、二本目のタバコに手を伸ばす。

絵梨チャンはそのあと私の言葉を理解したのか、終始笑顔で一生懸命やってくれた。
―なかなかエェ子やん
その姿を見て、ウチも負けてられんなぁッッと思いニコニコしながらホールを歩き始めた。


「ただいまぁ」
「おかえりぃ…ってゥワッッ!!いつにもましてドロドロ〜先風呂入りぃ。ご飯もぉちょいかかるし」
おぅ。という返事のあとに軽くキスを交わすと、彼・友哉(ともや)は荷物を置いて風呂場へ向かった。
私たちはいわゆる同棲ってやつで、ここに至るまでも数々の歴史があったけど(…とは言っても実際付き合ってからまだ10ヶ月程度)その話はまた後日。
中・高の同級生(2人とも中退)やけど友哉が早生まれのため、結婚はもぉちょい先の話。

「は?」
友哉の言葉に夕食のオムライスを食べていたスプーンを落としかける。
「だから、急やけどまた出雲に出張行かなアカンから…」
―またや。
友哉の仕事は出張が多く、今まで度々家を空けていた。
―今週から春先まで大阪や言うてたやんか…。
思わず抗議するために開いた口を一旦閉じて、適当な言葉を探す。
ここで喧嘩してもどうせ行くねんから。
「いつ帰ってくるん?」
ようやく出た言葉も何となくふてぶてしくなってしまい、つくづく自分は可愛くないなと思う。
「さぁ…土曜には帰ってくる思うけど」
「…ふぅーん」
はっきりしない態度に多少苛立ちながら私は夕食を再開した。
友哉は「ごめんな」と一言だけ言って、さっさと食べ終わりカバンに荷物を詰め始めた。

大きなカバンを1つ手に持って小さなショルダーを1つ背負い朝四時に家を出る。
慣れたとは言えやっぱり寂しくて、いつもは軽いキスが自然と長くなる。
友達によると、私たちの日常の一部になっている「いってらっしゃい」とか「ただいま」とか「おはよう」とかの挨拶のキスは、毎日すると5〜10年長生きするらしい。
やる気がでるからとか…そんなわけあるかいッッと思わずツッコミを入れたくなるぐらい嘘臭い話を思い出したおかげで、なんとか笑顔で送り出すことができた。


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