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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの絆<後編>-7

「待って、宮木さんっ!」
必死に逃げる宮木さんを、やっとの思いで捕まえた。手首を掴んだ途端、パシッという乾いた音が耳に届く。
「お願い、放っておいてっ!」
「でも…」
「いいからっ!」
いつになく強い口調で言った後、宮木さんは俺を振り返った。
「お願いだから…放っておいてよ……」
宮木さんの表情からは、必死に涙を堪えている様子が伺える。
俺は無意識の内に、その手を放していた。

「……ごめんね」
宮木さんは一言そう呟いてから、スッと昇降口を抜けて、雨の降る校庭へと飛び出した。
俺はただ…雨に打たれる宮木さんの姿を、見ている事しか出来ない。体が重くて、どうする事も出来ないでいる。

酷く後味が悪い…この気分は何だろう?モヤモヤとして、時折胸の辺りが苦しくなる。
この感じに名前を付けるとしたら、罪悪感…多分、そういう事なのだろう。
嬉しいとか…もうそんな事は、思えなくなっていた。


それからしばらく…宮木さんは風邪をひいたらしく、ずっと学校に来ない日々が続いている。
でも、学校に来れないのは風邪のせいだけでは無いのを、俺は知っている。
雨に打たれる宮木さんの姿が、いつまでも目に焼き付いて離れない。

宮木さんを学校に来れないまでに傷付けたのは、いったい誰だったのだろう?
光輝?水沢?
いや、違う…それは俺自身だった。
好きなのに…それだけなのに…俺の想いは、宮木さんを傷付けることしかしない。
水沢の言う通りだ。


「博也っ!ちょっと顔貸せ!」
休み時間…次の授業の準備をしていると、珍しく光輝の方から声を掛けて来た。
言うなり光輝は、足早に廊下へと出て行く。
クラスの皆が、その只ならぬ雰囲気に唖然としている。
俺は仕方なしに、光輝の後を追った。


「博也、聖に何を言ったんだよ?」
人目に付かない場所まで移動した光輝は、振り返るなり本題を切り出した。
「何の話?てか、宮木さん、風邪治ったんだ?」
「とぼけんじゃねぇよっ!」
強い口調で言った後、光輝は俺の胸ぐらをグイッと掴む。
「お前のせいとしか考えらんねぇんだよっ!聖に何を言ったんだっ!?」
「さぁ?」
「頼むから…教えてくれよ……」
光輝は俺の胸ぐらを掴んだまま、すがる様にして頭を下げる。
こんなに不安定な光輝は、今まで見たことが無い。
その姿からは、余裕なんか全く感じられなくて…そして痛々しい。
まるであの日の宮木さんみたいで、見ているだけで心が痛む。
罪悪感に、今にも胸が押し潰されてしまいそうだ。

光輝と宮木さん…今更だけど、二人はどこまでも似ている。
俺が入り込む隙間なんか無い程に、二人の生き方はそっくりだ。
同じ様に悩んで、同じ様に苦しんで…同じ想いを、いつだって二人は抱えている。
宮木さんのことを、諦めたくはない。
でも、こうやって不安定なまでに苦しむ二人の姿は、もう見たくない様な気がする。
俺は…どうするべきなのだろうか……


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