飃の啼く…第18章-15
「武器は無し、か。いい心がけだな、飃。抵抗したところで、無駄だからな。」
獄は、机の上の書き物から目を離さずに言った。
「英澤茜を解放しろ。」
飃はにべもなくいった。獄は、最後の数文を書きながら嘲笑混じりに返す。
「なにを子供のようなことを。切り刻んだ死体を君の家に送り付けなかっただけで満足し給え…どの道命はないが…少なくともあいつは楽に逝かせてやる。約束しよう。」
そして書き物から顔を上げ、上から下まで飃を嘗め回すように眺めた。
飃は反論しなかった。したところで、状況は改善しない。この時彼の心にあったのは、おそらく諦観なのだろう。
「ずいぶん物分りが良くなったじゃないか、坊や…まぁ、無理やり奪う楽しみは諦めねばならないだろうが…」
獄は、椅子から立ち上がると、そういいながら飃の周りを一周した。そして彼の髪の毛を掴んでのけぞらせ、耳元で囁いた。
「すぐには終わらせんぞ……」