ジャンプ!-9
「ああ、携帯サイトで小説を書いてる……半年前位からかな」
「それは……将来、物書きになりたいとか…」
「違う、違う!単なる遊びさ。最も、きっかけは中学生の女の子だけどね」
直海のこの発言に、2人はオーバーアクションで身体を後に反らすと、
「貞本さん、それ犯罪ですよ」
そう言いう目が引きつってる。
「話は最後まで聞け!そもそもはその子のお父さんとはバレーの仲間なんだ」
「それで?」
「その娘さんが中学3年生で、小説を書いていたんだ。ある日、彼女の作品を見る機会があったんだが、とても作品と呼べる代物じゃなかった。
オレはありのままに感想を述べちまった。そのために彼女を傷つけたんだ。
だから言った手前、謝罪の意味も込めてオレも書いてみたんだ」
直海の説明が終わると、林が、
「今、そこに入ってるの?」
直海の携帯を指差すと、彼は手に取って操作しながら、
「ああ、ここに……ホラッ」
彼女達は直海から携帯を受け取ると、頭を寄せ合って小さな画面に見入ってる。
「へぇ〜っ、ホントだぁ。ねぇ出来上がったら見せてよ」
「他にも数作品あるから……それをまとめてCDに入れて会社に送るよ」
農作業に庭仕事。野球のコーチにバレー、そして小説とまさにバライエティに富んだ直海の意外な一面。
逆に彼本来の生活への関わりを聞いて、林や夏川は驚きながらも、もっと聞きたいと思っていた。
「今度は君らの番だ。何か特技とか習い事とか無いの?」
直海は自分への質問をかわそうと、彼女達に逆質問する。すると林から、
「茶道……初めて1年位だけど…」
「へぇ……週にどれくらい?]
「1回。水曜日の夜にね……だから家に帰って急いで着替えて行くから大変よ」
「でも続いてるんなら楽しんだ」
「そうね。合ってるみたい……」
「それが一番さ。〈何でも楽しくやらなきゃ〉夏川さんは何かある?」
夏川は遠慮気味に、
「料理教室に通ってます。毎週日曜の午後ですけど」
「へぇ、意外だねぇ。スポーツとか得意そうだけど……」
「いえ……スポーツは全くダメで。お料理やってると気持ちが安らぎます」
ショートカットにやや太い眉からスポーツが得意だろうと思っていた直海の偏見だった。
「オレも料理はやるよ」
「それは見ました。給湯室でパスタ作ってたでしょう」
「それ以外にもカレー、中華全般、餃子に和風ダシはオレの担当なんだ」
「担当って?」
直海は料理〈担当〉にさせられた経緯を2人に面白おかしく聞かせた。
ようは作ってもらった料理に文句をつけるため、自分で作らざるをえないのだ。
彼の意外な一面を聞いて2人は喜んだ。特に夏川にとっては長い間〈憧れた〉相手だから、そう思うのは自然だろう。