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ジャンプ!
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ジャンプ!-1

「はっきり申し上げて、このまま親会社の下請けだけで生き続ければ、安定はしてるでしょうが飛躍はありえません。この問題を打開するには、自社による顧客増加を図るべきです」

会議室の壇上に立つ貞本直海は、親子ほど年の離れた役員達を前に生意気に言い放った。
途端に、会議室を重苦しい静寂が包んでいた。

ふたたび直海は続ける。

「では、ここからは具体的な案を述べさせて頂きます。まず、先程配布しました資料〈今後の熱供給事業のあり方について〉の1ページ目を……」

その時、本部長の井上が直海の言葉を遮った。

「君の考えたくだらん案は後でいい!それより冒頭に述べた事に対してだ。〈いまの経営戦略では、わが社はじり貧な状態になる〉これは経営に対する批判じゃないのか!」

直海は情けなくなった。批判と意見は紙一重だ。要は取る側の度量だ。その度量の小さな人間のために、定義づけや言葉遊びによって、この貴重な時間が割かれるのがガマンならなかった。

直海は井上に語った。まるで子供を諭すように。

「本部長、そんな事よりこう考えてはどうですか?これまで月1回、それも部長職以上で行われていた経営会議が、なぜ先月から月2回になり私のような現場の人間まで招集されるようになったのかと」

直海の意見を聞いている井上は明らかに苛立っていた。
彼は親会社からの出向者であり、現在の親会社との太いパイプを持つ。
親子会社からの仕事は、ほとんど彼の口添えによるものだ。

井上は強い口調で直海に言った。

「そんな事、私には関係ない!経営は今のままが一番なんだ。安定しているからな。それよりも君の言った批判だ。どう説明するんだ?」

直海も負けじと言い返す。

「では、何故、社長命令でこれだけの人間が集められて長い会議をやる必要があるんです?我々だってヒマじゃない。急ぎの仕事を残して来てるんです。このままじゃ先ゆきが不安だからじゃないんですか?」

その時、井上の部下の安藤が直海に対して、

「貞本君。本部長に対してその言いぐさは何だね!謝りたまえ」

直海の上司である木下は、彼のやりとりを見て、オロオロと狼狽するばかりだ。

その時、直海の中で何かが弾けた。自分を非難している井上や安藤の声が遠くに聞こえた。代わって自身の中で言葉が浮かんできた。

(くだらない……)


ふと周りを見た。そして思う。

(こんなくだらない事にこれだけの人間が付き合わされている)

「貞本君!」

誰かの声で我に返る。そして、目の前の井上を見据えると静かな口調で言った。

「本部長。たった今、辞める事にしました」

直海はそれだけ言って壇上から降りると、〈お世話になりました〉と一礼して会議室を後にした。
残された役員達はポカンとした顔で、直海の去って行くのを、ただ眺めるだけだった。


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