ジャンプ!-5
「じゃあ4月28日の夕方6時にミスドの前で……」
「分かった。楽しみにしてるから」
林や夏川と〈田舎〉に行く日程が決まった。直海はカレンダーを見る。
(今日は4月7日だから……20日頃になって予約すればいいか)
そう昼間は思っていたが、その日の夜には予約の電話を入れていた。
彼は個室をお願いすると、
「大将、アナゴは有るかな?あと、本シシャモも……」
店主は困った口調で、
「アナゴは時期には早いですけど……なんとかします。シシャモも」
「じゃあソレを3人前頼むよ。後の料理は大将に任すから」
直海は予約を済ますと、上機嫌で風呂へと向かった。
ー 4月28日夕方 ー
直海は自宅近くでタクシーが来るのを待っていた。
「アレッ貞本さん。お出かけですか?」
直海は声の方を見る。エスティマの中から顔を出しているのは、藤芳さんの奥さん浩子だった。次女の美奈を連れている。直海は軽く会釈をする。
彼女の長男、秀紀は、直海が教えている野球チームの選手で、夫の順一とは〈飲み仲間〉の間柄だ。
〈まずいところを見つかった〉と、直海は苦しまぎれに答える。
「エエ、ちょっと……」
「エ〜ッ、その格好。デートですか?」
「…まあ、そんなモンです」
「今日の貞本さん黒じゃないね」
美奈が直海の格好を見て言った。
どうやら彼女達から見ると、直海はいつも〈黒い服〉を着ているらしい。
確かに、今日の格好は靴がかろうじて黒だが、ジーンズはブルー、シャツは白、ジャケットは淡いレンガ色と、普段の直海らしくない。
浩子はそれをしげしげと見つめると、
「でも、そういう色も似合いますよ」
直海は照れながら、
「ありがとうございます。今日は何か?」
「ああ息子の迎えに…ちょうどここを通り掛ったらこのコが〈貞本さんがいる〉って言うモノだから……」
そう言いうとエスティマを移動させながら、〈今度、結果を教えて下さいね〉との言葉を残して走り去った。
直海がそれを眺めていると、入れ替わるように予約したタクシーが着いた。