ジャンプ!-21
「どうしたの?何を隠してるの」
直海は隠すべきやましい事も無いので、これまでの経緯を美加に伝えた。
すると、美加は何を思ったのか突然怒り出した。
「私は貴方の何!!今まで付き合ってきたのは単なる遊び?私だって伊達に30年生きて来たわけじゃないのよ。それが何!この程度の事も言えないわけ」
自分が蚊帳の外にされたのが悔しかったのだ。
興奮した美加は、涙を溢れさせていた。直海は優しく彼女を抱きしめながら、
「すまなかった。最初からオマエに相談すべきだった。要らぬ気を使わせたな……」
その夜、直海の抱擁はいつまでも続いていた。
ー翌日の夜中ー
直海の携帯からメロディが響く。それは非通知に設定したモノだった。
(来たか……)
直海は携帯を開くと、非通知である事を確認してから通話ボタンを押した。
「貞本ですが……」
だが、相手は何も言わない。直海は思い切って〈一発咬ませる〉事にした。
「夏川さん……こんな事しても君を好きにはならない。かえって逆効果だ」
相手は黙ったままだ。電話も切れない。
直海は、そのまま独り言を言うように話しかける。
「オレには大切な女性がいる。君も知ってる奴だ。君の気持はありがたいが、君とは付き合えない……」
相変わらず何の反応も無い。
直海は深呼吸をすると、再び続ける。
「君のおかげで母は体調を悪くしたよ。もし、君が逆の立場だったらどうする?オレはそんな身勝手なヤツを1番軽蔑する。だから、止めてくれ」
その時だ。電話の向こうから嗚咽が聴こえてきた。直海は通話を切った。
(これで明日からは無いだろう……)
久しぶりに安堵出来る心地よい夜だった。