ジャンプ！-20
「これを持ってサンパレスに行け」
それは直海が彼女の美加のために、内緒で買ったモノだった。
夏川も好きだという話を直海は聞いて、山内に渡そうとした次第だ。
最初、山内は〈そんな大事なもの受け取れない〉と拒んでいたが、直海の〈彼女にオマエを印象づける機会だぞ〉と押し切られると、
「しかし……」
「いいから。ホラッ早く戻らないと怪しまれるゾ」
2人は何事もなかったように席に戻った。
1時間ほどで店を出る。
ここから山内達は別行動になる。本当のデートの開始だ。
直海と林は〈またね〉と言って2人と別れた。2人はお礼と言うと、人ゴミの中に消えていった。
直海は腕時計を見ながら、林に聞いた。
「まだ3時か。帰る？この先に面白い店が在るんだけど」
「行く！さっきの反省会したいし」
「じゃあ行こう。すぐソコだ」
直海と林は並んで山内達とは反対方向に歩いて行った。
梅雨の晴れ間ながら爽やかな風が流れていた。
山内と夏川の初デートから半月が過ぎた。
時折、直海に送られてくる山内からのメールには、デートに誘うためのプランを相談してくる。
返信メールの中で、色々な場所をリストアップしてやりながらも、〈遊び歩いて見付けろ！〉と一言付け加えた。
(どうやらアイツ本気のようだな……後は…)
直海は携帯のマナーモードを解除した。
「ねぇ、直海。久しぶりにデートしようか？」
美加と2人、夕食を摂ってる時に突然、彼女が言いだした。
直海は飲み掛けのビールを戻しそうになるのを堪える。
「どうした？改まって…」
ティッシュで口を拭いながら美加に聞く。すると彼女は、
「先々週の土曜日。大名にいたよね？」
その瞬間、直海の心臓は凍りついた。
「あぁ、オマエも居たのか？」
取り繕うように話そうとする直海に対して、美加は余裕の笑みを見せながら、
「友達と歩いてたら直海と林さん、あと2人がそばを歩いて行くんだもん。
確か私には〈野球の練習〉って言ってなかったっけ？」
勝負あった。直海はうなだれたまま美加に、
「何が欲しいんだ！！」
美加はイタズラっぽい笑顔を見せながら、
「そうね〜、ワ〇ールのブラとパンツ。それとウェストニッパーで許してやろう」
(何が許してやろうだ！全部で2万はするじゃないか！)
と思ったが後の祭だ。直海は従うしかなかった。