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ジャンプ!
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ジャンプ!-2

ー夕方ー

いつもは夜遅くに浴びるシャワーを早めに使い、自室に向かう。
直海はベットに大の字になり天井を眺める。

(来週中に辞表は受理され、退職日はおよそ2週間後だから3月末くらいだろうか。
その間は、とりあえず仕事でいつもおざなりにしていた畑仕事や庭の剪定に精をだすか)

ふと目を閉じる。走り続けた10年間が浮かんでくる。

中途採用。

24歳で入社した。周りは大学出の〈若い先輩〉ばかりだった。そして彼らが直海に対する時の蔑げすむような目がガマンならなかった。
〈3年でコイツらに追いつく〉と、目標を立てた直海は、仕事の合間を縫って資料やマニュアルを読み漁り、必要な資格も積極的に取得した。

その効果は3年後に表れる。社が新規事業を行うにあたり、責任者として抜擢したのは〈若い先輩〉ではなく、直海だった。
それからの直海は、それまで以上に仕事に没頭した。

結果、新規事業は1年目こそ赤字だったが、2年目からは黒字となり、以降6年間、他の部門が赤字を出しても、直海の部門は黒字を計上しし続けた。

彼の運営方法は重役達から注目されるようになった。だが、それを疎ましく思う者もいた。
かつての〈若い先輩達〉だ。いつの間にか、立場を逆転されて面白いハズが無い。

彼らは、直海の事を侮蔑し、中傷するようになる。
しかし、直海はそんな奴らの事など気にも止めなかった。仕事が楽しくて仕方なかったのだ。

だが、それももう終わった。新たなステップを踏む時期を迎えたのだ。

部屋をノックする音で直海は現実に引き戻される。

入って来たのは母親だった。

「何?」

「会社から電話」

ベットから起き上がると、直海はリビングに向かった。




会社を去る朝。
直海は新調したスーツに身を包んでいた。総務部長の本田に重役達への挨拶を促され、直海は常務や専務、社長の部屋に赴き、最後の挨拶をする。彼らの反応は醒めたものだった。
最後に相談役の相馬の部屋を訪れた。相馬は直海が入社した当時の社長だった人だ。

「相馬相談役。10年間お世話になりました」

直海は深々と頭を下げる。

(これで終わった……)

すると相馬は微笑みながら直海の傍に寄ると、

「色々苦労掛けたね貞本君。〇〇では雪の中、君が設備を直してくれたな。〇〇の時も、夜中まで掛って復旧してくれた。また、〇〇時も……」

それを聞いて直海は驚いた。相馬は7年間の事を覚えてくれていたのだ。


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