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ジャンプ!
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ジャンプ!-14

ー土曜日ー

「すまない!オレが誘っておきながら遅れてしまって」

「いえ、遅れたと言っても5分でしょう。私も今、来たところですから」

直海の弁解を夏川は笑顔で答える。
ウソだった。
彼女は約束の15分前から待っていたのだ。

直海は彼女とのデートに土曜日を選んだ。その日は夏川が土曜出勤と知っていたからだ。土曜日は昼までの業務だった。

「イタリアンで良いかな?」

夏川は〈ハイ!〉と答えて直海のとなりを歩いて昼食に向かった。
天神の昭和通りと明治通りを結ぶ小路に入っていくと、店の前にイタリア国旗が飾られてた、濃い緑の外装が特徴的な小さな店が現れる。

〈マンマ〉とイタリア語で書かれた看板がススけている。
いつから在るのか直海も知らない。板張りの内装具合からいってかなり古い店のようだ。

店に入るとお昼を少し過ぎているためか、客はまばらだった。直海は、奥の席に夏川を案内すると、彼女を店が見渡せる席に座らせた。
「ここは10年近く前からたまに来る店なんだ。今の本格イタリアンとは違って日本人に合うようアレンジされた料理が好評なんだ」


直海はランチコースとハウスワインを頼んだ。

すると夏川は、

「私、昼間からお酒はちょっと……」

「たまには良いだろう?諺にも有るだろう〈汝、よく食べ、よく飲み、よく遊べ。人間、いつ終わりが来るのか解らぬのだから〉って。たくさん飲まなければ大丈夫さ!」

そう言ってデキャンタで置かれたワインを夏川のグラスに注いだ。
前菜は山菜をボイルしたものにアンチョビで味付けしたモノだ。少しクセがある。
次はイワシのソテーに味付けしたオリーブオイルをかけただけのシンプルな料理。が、これは絶妙だ。レモングラスの香りがイワシの生臭みを消している。

直海は頬を緩ませながら2杯目のワインを飲み干すと、夏川は1杯目を半分ほど飲んだ位だった。

直海がストレートに聞いた。

「この前、〈オレをずっと見ていた〉って言ってたけど……」

夏川は躊躇無く答える。

「…ハイ…初めて見たのは汐見球場でした。あの時、貞本さんすごい迫力でした」

それは直海がまだ野球をやっていた頃だ。
地域代表を決める大会で、優勝すれば東京ドームで行われる全国大会に出場出来る。
その大会の準決勝。社をあげて応援に来てた時だろう。直海は2番手で投げたからだ。

彼女に言われるまでもなく、こと野球に関しては仲間が見ても、〈人が変わる〉らしい。
投げてる時、バッターから見た彼は〈危ないヤツ〉と揶揄された事があった。


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