ジャンプ!-12
「チアーズ」
直海は半分ほどを喉に流し込む。しびれるような刺激が彼の全身を駆け巡る。林もマティーニを一気に傾けた。
それを横目で眺める直海。
(先刻もかなりのピッチで呑んでたが大丈夫か……)
それからしばらくはお互いに近況などを雑談していたが林が、話題を変えた。
「夏川さんとのデートどうするの?」
直海はキャメルを取り出して火をつけ深く吸うと、
「まあ……〈思い出作り〉かな。あのまま別れたんじゃ彼女が可哀想過ぎる」
「変な良心はかえって彼女を傷つけるわ。注意なさいよ」
「分かってる……ところで山内ってのはどうかな?」
「山内君がどうかしたの?」
林は直海の意図が解らなかった。
「夏川さんの相手にさ……彼女あの歳でまだ〈恋に恋してる〉ようだし。たぶん、身近な相手と付き合えば自然とオレへの想いも消えるよ」
林はカウンターに頬杖をついて、
「山内君かぁ……彼、ちょっと押しが弱いのよねぇ。優しいけど。貞本さんみたいにはっきりした人の方が、彼女には合ってると思うけど」
確かに会社で林と夏川を〈オバさん〉扱いするのは直海だけだった。
「オレに言われても困るよ。オレには付き合ってる彼女は居るんだから……今さら二股なんかヤだぜ」
林は驚いた様子で、
「貞本さんでもそんな事するんだ?」
「ああ、若い頃にね。まさに若気の至りだ」
そして、林の目を見ながら、
「君とだってそうだ。もし、君が独身だったらオレは迷わずデートに誘ってるよ」
直海の悪いクセだ。すぐに自分の気持ちを相手にストレートにぶつける。
林はやや照れながら困惑気味に直海に言った。
「……バカ…」
直海と林の〈反省会〉は深夜まで続けられた。
ある日の午後。直海はキッチンに立っていた。
フライパンにオリーブオイルを注ぎ、軽く潰したニンニクひとかけらに鷹の爪をひとつ。弱火でゆっくり炒める。
オイルが泡立ち、ニンニクの香りが立ってくる。直海はニンニクと鷹の爪を取り出すと、ミートソース、小さく刻んだトマト、先に炒めた玉ねぎ、ピーマン、ベーコン、ケチャップを入れて中火で熱していく。
となりで茹でていたパスタを1本食べてみる。かなり硬めだ。パスタを鍋からザルに揚げる。残った茹で汁を100ccほどフライパンに入れた。
フライパンにパスタを入れてソースに絡める。硬めに茹でたパスタに汁気が染み込んでいく。
頃合いで火を止め、パスタを手早く皿に盛りつける。
直海オリジナルの〈ナポリタン〉だ。