花火師と花火玉-3
「ただいま」
「よう、お帰り」
・・・そういやただいまって言って返事があんの何年ぶりだっけか。
「どうした?玄関でアホ面かまして」
「・・・」
「待て待て、謝るからバケツに水を汲むな」
少しでもしんみりした俺が馬鹿だった。
「準備はどんな感じだ?」
「てめぇのことがなけりゃ全て順調だよ」
「そうかそうか、そりゃよかった」
・・・マジで解体してやろうかな。
「さてと、そんじゃあなんか喋ろうや」
「なんでだよ。明日も仕事なんだからもう寝るよ」
「あのな、俺がどんだけお前が帰ってくるのを待ち望んだかわかってんのか?」
「花火玉に言われてもな」
「よく言うよ。彼女もいねーくせに」
「てめぇぶっ壊してやる!!」
「ちょ、落ち着けって!」
「・・・寝る」
「おいおい、待てって」
「・・・」
「相棒は何で花火師になったんだ?」
「・・・」
「答えねーと爆発・・・」
「わかったよ!!…ガキの頃見た花火が綺麗だったんだよ。それで俺もそれを作りたいと思ったんだよ」
「・・・それだけ?」
「・・・悪いかよ」
「いや、相棒らしい単純な理由だ」
「なんとでも言え」
俺だって単純だと思ってんだから。
「でもすげぇじゃねーか。ガキの頃の夢叶えたんだから」
「・・・」
「もっと胸はれよ。中々すげぇことだぜ」
「・・・いいからてめぇも寝ろ」
「頑固な相棒だぜ、全く」
「・・・」
「ほれ、朝だぞ。起きろ相棒」
「わかったよ、起きるから。」
「今日が最後なんだろ」
「ああ、明日が祭りだからな」
「いよいよ明日か」
「そうだな。じゃあ行ってくる」
「おう、行ってこい!」
・・・こんなふざけた生活とも明日でお別れか。
『さてと。みんな、いよいよ明日は本番だ。今日まで良く頑張ってくれた』
『親方、お疲れさんです』
「お疲れさんです」
「明日は朝から準備だ。今日はゆっくり休むように。それじゃあ解散!」
「・・・あの、親方」
『ん、どうした、健吾?』
「・・・いえ、なんでもありません。明日上手くいくといいですね」
『なんだぁ?ひょっとして緊張してんのか、健吾?』
「・・・そうかもしれません」
『安心しろ。お前はちゃんとやれる。初仕事だから緊張するのはわかるがそう肩を張らずに気を抜いていけ』
「・・・うす。お疲れさんです」
『おう、お疲れさん』