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花火師と花火玉
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花火師と花火玉-1

『おーい、健吾。先にあがるぞ〜』
「はい、お疲れ様です」
『わかってると思うが、灯りと鍵だけは絶対に忘れるなよ。お前がいるのは』
「火薬庫なんだから…でしょ?」
『わかってたらいい。あんまり無理するな。初仕事だから張り切るのはわかるが集中力が切れた状態でやると大事故になりかねないからな』
「大丈夫です。もう少ししたら帰ります」
『そうか、わかった。お疲れさん』
「お疲れ様です」
・・・はぁ、今何時だ?・・・九時か。
「あともう何個か仕上げるか」
祭りまであと少しだからな。親方にああは言われたけどやっぱ花火師になって初めての仕事だから頑張らないわけにはいかねーわな。
・・・
・・

「くぁ〜、疲れた〜」
十時半か…さすがに遅くなってきたし帰るか。えっと鍵は…
「おい」
「おわぁ!?」
なに、え、誰?いや、俺以外いるわけないし・・・
「だ、誰だ!?」
「後ろだ後ろ」
「は?後ろ?」
後ろっつったって・・・火薬玉並べてる棚しか・・・
「それであってるよ。その花火玉が喋ってんだよ」
「・・・は?」


〜花火師と花火玉〜

「やばいな。幻聴が聞こえるとは相当疲れてるな」
「だから幻聴じゃないって」
「明日みんなには悪いが病院行って休ませてもらうか」
「・・・次無視したら自爆するぞ」
「・・・」
ちょっと待て。マジでこの花火玉が喋ってんのか?・・・んなアホな。
「本当にてめぇが喋ってんのか?」
「だからそうだって」
「・・・百歩譲って今の声が目の前の花火玉だとしよう。なんで花火玉が喋れるんだ?」
「俺が知るかボケ。気づいたらここに陳列されてたんだよ」
・・・ずいぶんと生意気な奴だな、おい。
「・・・いつからだ?」
「あん?」
「いつ気がついたんだ?」
「三日ほど前かな」
「なんで俺に話しかけんだよ。さっきまで親方だっていたのに。」
「てめぇが一番単純そうな顔してたから機会を窺ってたんだよ」
「・・・」
「そんな怖い顔すんなよ。冗談だって。本当はあんたがいつも最後まで残ってたからだよ。」
新人だから努力してたのが災いするなんて…。なんか怒らすことしたか、俺?神様よう。
「俺が他の人を今から呼んできたり、てめぇを解体するとかは考えなかったのか?」
「そん時はてめぇを道連れに木っ端微塵になってやる」
・・・この野郎。
「・・・で、てめぇはどうしたいんだ?」
「別に。特に深い理由はねーよ。ただ一人だと退屈だっただけだ」
「ほぉ、そうか。じゃあこれからたまに喋ってやるからそれじゃあな」
「待て待て」
「なんだよ?」
「てめぇの家連れてってくれよ」
「はぁ!?」
なにふざけたこと抜かしてやがんだこいつは。


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