旅立ちの日-14
「何だ?」
「あそこ……」
その方向を見ると、里香と美那は眠っていた。朝早く起きて疲れたのだろう。
「オレ達も眠るか……」
2人も横になり眠った。
「なんで起こしてくれなかったのよ!」
怒鳴る美那。彼女達が起きた時、日は西に傾き出していた。
いくら秋とはいえ、直射日光を長時間浴びた2人は日に焼けてしまったのだ。
どちらも赤く上気した顔で、
「シミになったら、どうしてくれんのよ!」
一巳達は苦笑しながら、
「一回焼けたくらいでシミにはならないよ」
風も冷たくなってきた。皆は、一巳の叔母にお礼を言うと、帰路についた。
県道に入る手前の信号待ちで、一巳は里香に聞いた。
「今日も美那ン家に泊まるの?」
里香は首を振って、
「ううん、帰って寝ます」
一巳は思い切って彼女に言った。
「今夜会えないか。二人きりで…」
「………」
里香が戸惑いの沈黙を見せる。一巳は、なおも言う。
「もう一度会いたいんだ」
その言葉に、里香が沈黙を破る。
「………分かった……」
一巳は少し声を上ずらせて、
「じゃあ11時に迎えに行くよ。クラクション鳴らすから」
信号は青に変わり、再びバイクは走り出した。
〇号線バイパスを〇〇前から右に折れて、路地へと入る。すると4階建ての小さなマンションの前に出る。
里香の自宅だ。
彼女を送った一巳は、土田と美那に今日のお礼を言うと、別れて自宅へと帰っていった。
帰り着いた一巳は、まずシャワーを浴びた。疲れた身体に熱水が心地よく感じられる。
バスルームから出ると冷蔵庫にあるビールを一気に飲んだ。
酔いと共に急激な睡魔に襲われ、一巳は自室に戻るとすぐに寝てしまった。