BUCHE DE NOEL-9
只今、24日午後12時。
約束の時間より30分も早く来た俺。恥ずッッ!!
「〇〇駅前のLAWSON。ここだ。よし」
とりあえず確認。俺は片手に持った紙袋を見て少し微笑むと、近くにカフェがあるので、そこにいると彼女にメールを入れてその店に入る。
「ホットコーヒー」
そう言ってカウンターに座りかけたが、彼女がくるのでテーブル席についた。
「おまたせしましたー」
目の前のコーヒーを一口すすって、俺は彼女を想う。
どんな服を着て、どんな一言で俺に声をかけるのか、とか。
「…と?雪兎ーねぇ〜?」
目の前を小さな手がブンブンと視界をさえぎって、俺は我に帰った。
「まりあ!」
「メリークリスマス!待たせてごめんね」
もこもこの白いマフラーに、白いプリーツスカートの彼女は、まるで空から舞い降りた天使のようだ。
何言ってんの俺……
「いや、まりあこそ、急いだんじゃない?」
「家近いからすぐ来れたよ。お兄ちゃんが送ってくれたんだよ」
お兄さん、がいることを今初めて知った。
あんなに病院で話をしたのに。
「そっか。じゃぁ行こっか」
「うん!」
「案内してくれる?」
「うん!!」
やわらかな笑顔を向けて、彼女の手をにぎる。
俺はずるい。ミキの家の最寄り駅がここだと知っていながら、まりあの家からも最寄りと言うことで、“都合がいいから”待ち合わせをここにするなんて。
「ランチ、どこで食べるの?」
「ここから少し歩いたとこに、綾乃ちゃんの彼氏さんと綾乃ちゃんのお店があるの。そこがいいとおもうんだぁ」
「じゃあそうしよう」
「ん!」
カツカツと、俺の手を握りしめて、彼女はブーツの音を立てて歩く。甘いベビードールの香りに包まれたまりあは、とても可愛い。
「ここだよ」
そこは、少し小さめだが小洒落たレストランだった。ドアをふわりと開けて、中へと俺を連れて行く。手はにぎりしめたまま。
「いらっしゃいま…まりあ!」
「来たよ〜!」
「雪兎くんだっけ?よく来てくれたね!あ、そこのテーブルに座って」
チェックのテーブルクロスのかかった木製の机を指してアヤノさんは言った。俺はかるく頭を下げて席につく。
「ここのオムライスおいしいんだぁ!綾乃ちゃんの彼氏さんがつくるの」
「へぇ〜!」
俺はメニューを眺めながら、アヤノさんとまりあは同い年ではないのだろうかとふと疑問に思った。
「すいませぇん」
と、彼女はアヤノさんを呼んで、きのことクリームソースのオムライスとホットレモンティを注文した。
「雪兎は?」
「えっと」
あわててメニューを見る。おすすめ、と書かれたデミグラスソースのオムライスとホットコーヒーのセットを指差す。