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BUCHE DE NOEL
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BUCHE DE NOEL-13

「あとね…ほんとは22才なの…雪兎に好かれたくて、ウソついちゃった…」
だから、お菓子やさんの資格もとれてるの、と彼女は苦笑した。もう一回、ゴメンねと消えそうな声で謝って。
俺は涙が溢れてきた。「俺!ほんとはまりあのことすげぇ好きで!でも前みたいに、傷付きたくなくて…逃げてゴメン!」
「いいよ…あのときの雪兎、ほんと辛そうだったから、いいよ」
「…?」
「聞いてたの、あの時、少し」
だから、あのあとあんなに目が腫れていたのか?俺の痛みのために、泣いてくれたのか?
「でも…そのせいでこんな目にあわせて!しかも!」
「いいよ」
彼女の柔らかい声が響いた。俺の手に、彼女の手が触れる。
「私のこと、ずっと好きって言って…?」
「え…?」



「それで、全部ちゃらだよ…雪兎がいたら、頑張れるもん…」
「ッッ……!!スキだよ…大好きだよ!」
そういうと、まりあは安心したように笑った。俺は、彼女がもう一度眠りにつくまで、ずっと手をにぎってはなさなかった。
彼女が寝息を立てる横で、俺は静かに泣いた。





「いい天気だねー!」
車椅子にのった彼女は笑う。ゆらゆら舞うモンシロチョウをみて微笑んだ。
「なぁ」
「ん?」
「俺、母さんに言われてたんだ。中途半端してたら誰かを傷付けるって。俺は、あのとき意味を理解してたらって…何度も後悔したよ。今も」
日差しが暖かい。たんぽぽがふわふわと揺れた。
「私は後悔なんてしてほしくないな」
「そう言われてもな…」
「だって、こうして雪兎と結ばれたんだもん!」
「もっといい結ばれ方はたくさんあるよ」
「ううん!今幸せなのは、こうやって結ばれたからなんだよ」
あそこの木陰に行きたいなぁ、と彼女の言うままに車椅子をおす。
「今年はちゃんとつくるぞーブッシュ・ド・ノエル!」
「なぁ」
「ん?」
「俺パティシエの学校受けるわ」
「ほんとに?」
「んで、お菓子屋さん二人で開こうな」
「うん!」
俺たちは笑った。柔らかな日の差す小春日和だった。





今年もクリスマスはやってくる。



サンタクロースはいるよとまりあは太陽を見上げていった。



ならばずっとサンタクロースよ。



俺たちに、その袋いっぱいの愛をもってやってこいよな。



ブッシュ・ド・ノエルを手土産に、もたせてやるから。


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