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BUCHE DE NOEL
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BUCHE DE NOEL-7

俺のギブスも無事とれて、少々のことでは痛みを感じなくなった。まりあも相変わらず順調の様子で、無事退院の日を迎えた。
「二人まとまっていなくなっちゃうのねぇ〜」
「ほんと、寂しくなるわぁ」
山下さんが花束を、岡部さんがなぜかお煎餅の詰め合わせを俺たちに手渡してくれた。
「今までお世話ンなりました」
「いぃえ〜また来てよ!」
いや、来ないように元気で頑張りたいと思います。
「雪兎お迎え来る?」
「あぁ、下に和也が車回してくれてるって」
「そっかぁ」
「まりあは?」
「んー?昨日電話したんだけど…」
「まりあ!」
シックな色のトレンチコートを羽織った大人っぽい女性が部屋に入ってきた。
「綾乃ちゃん!」
アヤノちゃん、と呼ばれた彼女は、やけに大人でそれでいて暖かな空気を持ち合わせた人だった。
「来てくれたんだぁ」
「当たり前でしょ。車、下にとめてあるから、ランチしながら話そっか」
「うん!!」
荷物を持って、まりあはフレアスカートをひらっと翻して、看護婦さんにお礼言ってくるねとスタスタと行ってしまった。
「あの子と話してると、心が休まるわよね」
ふわっとした笑顔でアヤノさんは俺の方を向いた。
「そうですね」
「しっかりした考えは持ってるんだけど、ちょっとした障害でね。少しまわりより幼い面があるの」
さっきと変わらぬ表情で、しかししっかりとした声で話す。
「まわりの人間は、それだけであの子を避けて嫌ったわ」
でも、あなたは違うみたいね。ありがとうと、頭をさげられた。“私、子どもっぽいから”
と淋しそうに言ったまりあの気持ちが、やっと理解できた。
「ねぇ〜〜あいさつ終わったよ!」
彼女はにこやかに、でも両手に薬の入った袋を抱えて帰ってきた。
「じゃあ、下まで御一緒しましょうか」
「はい」
山岡コンビや看護婦数名にエレベーターまで見送られて、俺たちはロビーへと向かう。
「うさぎ!」
和也が手をふる。他のやつらは俺ん家で退院パーティーの準備をしていると孝嗣からメールが入っていたので、和也一人ということに淋しさは感じない。
「それじゃ、これ」
彼女から紙を受けとる。開いてみると、住所とメアドが書かれてあった。
「住所、書き忘れてたから」
前の紙もなくされてそうだし、と彼女は笑った。
「ありがと。すぐ送るよ」
ひらひらと手を振る彼女。メアドを見ると、“okashi.no-kuni...@...”と綴られていて、お菓子屋さんになりたいってほんとなんだなぁと、ひとつひとつの思い出にひたりかけていた。
「行くぞ」
「んあ、あぁ」
少しずつ彼女から距離が離れてゆく。まりあは、もう車に乗り込もうとしていた。
「うさぎ?」
「おぉ」
俺は歩き出し、車は走り出す。それぞれの帰るべき道へと向かって。


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