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ユビワ
【悲恋 恋愛小説】

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ユビワ-3

「これも鹿沼?」
鎖骨の下にあるキスマークをなぞり、彼が尋ねる。
「ヤンチャもいいけど、相手は選べよ」
彼はため息混じりにそう咎め、紅く腫れてしまった私の頬にそっと口づけた。
そのまま唇は首筋を渡り、脚を愛撫していた手は下着にかかる。
「…これも鹿沼の跡?」
「違います」
既にそこが十分過ぎるほど潤っているのは、あなたのせいだ。
触れられる以前から、あなたに男の目で見つめられた瞬間から、私の身体はおかしくなっていた。
「さすがに、気に喰わねぇな」
「違うってば…んっ」
噛み付くようなキスを受ける。
彼の味が、私の中を浸蝕していく。
でも、まだ。
まだ、堕ちることはできない。
「指輪」
私は彼の身体を押しのけ、言った。
「外して」
彼の鋭い瞳が、わずかに見開く。
「葛城さんがどう思ってるかは知らないけど、私は普通の女です」
「有住…」
「安心してください。ルール違反はしないようにしますから。ただ…」
私は顔の横に添えられている、彼の左手を見つめた。
今まで何年間も、そしてこれからもずっと彼を拘束していく絆。
「この手に抱かれるのはイヤ」
彼はしばらく私を眺め、おもむろに服を脱ぎ始めた。
そして、全身裸になった彼は、最後に薬指から指輪を外した。
再び交わしたキスは、宥めるような甘いキス。
「葛城さん…」
名前を呼んでも、彼は何も答えない。
ただ無言で、私の身体に触れていた。


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