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「集結する者たち」
【ファンタジー その他小説】

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「集結する者たち其の一」-1

――今日もまた、世界が産まれ、死んだ――
――また、か――
――いい加減、ここも息苦しくなってきたな――
――我等も昔は、産まれたての世界で一暴れしたものだが……それが今ではひどく懐かしいな――
――ならばいっその事、世界を壊してはどうだ?――
――なに……?世界を壊す?――
――それは『世界の法則』に反するのではないか?――
――法則?我等“悪”が必ず滅び去る、くだらない法則か?――
――くだらない、ね――
――確かに……言われてみると、くだらないな――
――ならば壊そう、世界を。仲間を募り、壊そう、くだらない世界を――
――そう、だな――
――我等、奈落より這い出でて、一輪の花となろうではないか――



「ふぅ……」
雨に濡れた身体を眺めまわす。傘を持って行けば良かった、などと今更な事を考えながら、中根裕之は自宅の戸の鍵を開けた。
思えば今日は、なんだかおかしな日だった。昨日の天気予報では「明日の降水確率は百%でしょう。所によって、暴風雨となります」と天気予報士のお姉さんが言っていたのにも関わらず、裕之は傘を持たずに家を飛び出した。別段、急いでいたわけではない。お天気お姉さんが言った事も、朝になっても鮮明に頭に残っていた。
なのに、だ。
「……予感なんて、信じなきゃ良かった……」
傘を持とうとした瞬間、なんとも言い知れぬ寒気が裕之を襲った。俗に言う、嫌な予感だ。この嫌な予感を感じた時、大抵良くない事が起こる。だから裕之は、敢えて傘は持たなかった。
だが今、彼は後悔していた。ちなみに、決してキレてはいない。呆れているのだ、予感なんかに左右される自分に。
「あ〜あ……」
空の冷蔵庫を眺めながら、裕之は溜め息を吐いた。正に壮観、なんて考えつつも着替え始める。
今日の学校帰り、彼は寄り道をしようと計画していた。スーパーに、である。
「……やっぱ、無理してでも行った方が良かったよなぁ……」
今夜のおかず、どうしよう、と低く呟き、裕之は再び溜め息を吐く。スーパーに寄り道したかったのは、少なくなってきた冷蔵庫の中身を補充する為だったのだ。最近はなにかと忙しく、スーパーに寄ってる暇はなかった。寄ろう、そう考えてしかし、彼は雨が降ると言われながらも傘を持たなかった。嫌な予感を感じたから。だからこそ、週末の今日こそは……という願望も虚しく、裕之はびしょ濡れになって帰ってきたのだ。ただし今はもう、着替えが完了したが。
「……ありあわせの物でいいか」
所詮は自分の飯だ。裕之は妥協する事にした。



「中根裕之……」
その裕之を、雨降る窓の外の木より眺める者がいた。
その者は、とにかく丸かった。いや、丸っこいわけではない。丸いのだ。白い身体に垂れた嘴、そして丸い身体。それはどこぞの島の鶏を彷彿とさせる。
「多重人格な女の世界からこちらへと……まったく、 面倒な事をしてくれたものだ……」
それが放った言葉は雨に掻き消え、また、それも消えた。遥か大空へと、翼を広げ。
「まあいいさ。こいつらはタフだし、あいつらは負けてるわけだし。それに……ご主人に逢えるかもしれないし……」
それは豪雨の中、雲の彼方へと消え去った。白い羽根が、二、三枚、夜空に舞い散った。


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