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「集結する者たち」
【ファンタジー その他小説】

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「集結する者たち其の一」-2

「うん。俺って天才だな。あれだけの材料で、こんなにも美味い物を作れるんだからな」
自らの料理に舌鼓を打ち、さらに自画自賛する裕之は、明日は休みだし、朝飯食ったらスーパーに行こう、と明日の計画を練りつつ、夕飯の後片付けをする。アスファルトを穿つ豪雨に、明日は休んでいいんだぞ、なんて声をかけたりした。
「……?」
やはり嫌な予感がするらしい。なんとなく落ち着かない素振りで裕之は洗い物を済ませた。あとは、入浴して就寝するだけだ。
(いや、明日は休みだし、夜更かしするか?)
しばらくその場で考えた。
裕之はこんな、なにもせず、ただボーッとなんらかの事柄を思索する時間がなによりも好きだった。ちなみに二番手は料理、三番手は他人弄り。
(……寝るかな)
結局早寝する事にした。そう言えばタイムサービスは昼までだったという事を思い出したからだ。朝食の下拵えをした物をラップで包み、レンジに入れ、夕飯を摂っていた居間の電気を切る。電気代節約だ。……そういうところはしっかりしているのだ、裕之は。
と、浴場に向かうと、
「風呂……沸いてねぇ……」
湯を沸かすのを忘れていた事に気付く。ったく、これだから一人暮らしは……などと文句をたれつつ、しかし思う。
(一人暮らし、か……)
裕之に両親はいない……なんて事はなく、未だに健在だ。ただ今は、海外旅行中(父親の海外出勤に母親がくっついてるだけなのだが、裕之にとっては海外旅行以外のなにものでもない)な為、不在なだけである。
「……ま、いいや、一日くらい風呂に入らなくても。沸かす間、待つのめんどいし」
とりあえず入浴は諦め(歯磨きはしたが)、就寝する為に二階へ向かう。その前に、玄関の戸締まりは(面倒だが)忘れなかった。
「ふぅ……」
柔らかい羽毛布団に身を沈める。一日の疲れ(豪雨にさらされた)という名の垢を落とすように、ゆっくりと。
窓を叩く暴風雨。これで台風でないと言うのだから、不思議でならない。裕之はただその様子を、暗闇の自室から眺めていた。と、
バン!
「っ……?」
なにかが窓に当たったらしい。この風で飛んできたのか。裕之はその物体を目を凝らしてよく見た。
「……ぁ……ぅぅ……?」
掠れ、消え入りそうな声を、それは発した。その丸くて赤い物体は。
「な……!」
いや、よく見れば白い部分が基になっているようだ。ただそれに、赤が被さっている。
「あんた……裕、之……」
血の、赤が。
「ちくしょ……あいつら、かなり強くなってる……。この私が、手も足も出なかった……」
裕之はしかし、その丸い生物を窓を開け放って中に入れてやる。その際、雨が少し部屋に落ちた。閉めて見ると、ちょっとしたグロ画像。円形の血痕が窓に残った。
「大丈夫……か?」
まずは声をかける。血だらけのその身体は、動く事を拒否しているようだ。しかし、眼だけは死んでいない。裕之には分かった。
「う……」
「……なわけないか……」
裕之は立ち上がった。自室の棚を漁る。……しばらくすると、救急箱が出てきた。
「応急処置に過ぎんが……ま、やらないよりはマシだろう」
かなり落ち着き払い、裕之は救急箱を開ける。血を見るのは慣れている、まるで態度がそう物語っているかのように。
「えーっと、消毒液に包帯に……あとは獣医への電話……」
言いながら飽くまでも冷静に慌てず、しかし迅速で正確な行動。包帯を巻く手際など、素人を遥かに凌駕している。……とりあえず、死にかけてはいるが、一命は取り留めたみたいだ。
やがて裕之は、手が血に染まるのも構わず(もちろん、触る前に抗菌処理はした)、その丸い生物の応急処置を黙々とこなし、終わらせた。


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