ゆきのした。-8
やっと眠りにつくことが出来た。
何分経っている事やら、激しく気になる。
時間は過ぎていく。
夢も見ずに目覚めてしまった。 …つまらない。
それより気になることが一つ。
僕はソファーから約三尺離れた所で寝ていたはずだ。
そこから、
姉ちゃんはどうやってここまで来たんだろう。
さっきみたいに腕に抱きついて寝てるんだけど。
バスタオルまで丁寧に掛けられてあるし。
世の中不思議だらけで本当に困る。
ちらりと時計に目をやった。 短針は8と9の間を指している。 お腹空いたな…。
さて、この姉ちゃんをどうしたものか…。
脳内一人会議を開くことにしよう。
〔このまま起こすべきだろうか? …否、場合が場合だ。 何よりも僕自身が恥ずかしい。
…腕を解こうにも今回は力が強すぎて解けない。 何か良い手段は無いのか…?
……無い、か。 しかし、そうこうしてる内に僕のハートがヒートしてしまう。
ええい! 仕方ない! ここは強行突破………いや、よく考えよう。
…どうする! どうするよ!? 僕!〕
「………どこ行くの……?」
固まった。
放置した紙粘土…ではちゃんとした例えにならない。 言うなれば
『蛇に睨まれた蛙』といった感じ。
「…離れちゃダメって…言ったよ…」
凍り付く僕。
声が出ない僕。
心臓が破裂寸前の僕。
「……ね、こっち向いて? 透………」
…無理。 姉ちゃんの顔を見ることなんて出来ない。
力ずくでやられたとしても、僕は全力で抵抗する。
「透から…ぎゅうって、抱き締めてほしいな……」
……………。
ふと思った。
本体の僕はまだ寝てるんじゃないかと。
これは夢なのではないかと。
…現実逃避せざるを得ない。 今までにこんな艶のある姉ちゃんを見たことが無いからだ。