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ゆきのした。
【家族 その他小説】

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ゆきのした。-1

 何気なく、優しい速度で落ちる雪の粒を捕まえてみた。

 しかし手に取ったその瞬間、溶けて消えた。


 生まれてこの方、透は雪の感触を味わったことがなかった。

 積もった雪や結晶じゃなく、一粒一粒の感触を知らなかった。

 液体なのか固体なのかすらもわからなかった。

 俗の先入観に引き込まれずに、きっと柔らかいんじゃないか……そう考えていた。

 それは、閃光が広がる夢の出来事。





 改めて思う。
 クリスマスという日は一段と世界が明るく見える。
 どこもかしこもイルミネーションが虹色に光っていて、網膜が刺激されるほどに綺麗だ。

 大きいクリスマスツリーがあったり
 よく出来ている雪だるまがあったり
 サンタの衣装を着て客寄せしてる店員さんがいたり
 上半身裸でランニングしてる人がいたり…?

「わ! すごいよあの人! 雪が降っててこんな寒いのに、裸で走ってるー!」

 すぐ真横から笑い声が聞こえる。 もちろんその声の主は雪柳 由紀奈(ゆきやなぎ ゆきな)
 僕の姉ちゃんだ。

 あははと笑いながら視線の先を指さす姉ちゃん…って

「声でかいよ、姉ちゃん。 それと、人に指さしちゃダメだって…」

「だってだって、変なんだもん。 あはははっ」

「…あ。 ほら、姉ちゃんがそんなこと言うから、あの人、睨んでるよ…」

 聞く耳を持たずに馬鹿笑いしてるので、すみませんとお辞儀をしておいた。



「それでさ、姉ちゃんは父さんに渡すプレゼント、ちゃんと決まった?」

 歩きながら、頭に付いている白い粉雪を子供らしく払っている姉ちゃんに問いかけてみた。

 しかし返事は、んーとかあーとかしか返ってこない。 人の話を聞いてるのかこの人は。

 数秒後、こちらに顔を向け、言い放ってきた。

「……何の話だっけ?」

 笑って誤魔化す姉ちゃん。 どうせそうだろうと思った。

「だから…プレゼントの話! 何の為に外にいるんだよ…」



 今日、父さんは接待やら送別会やらでかなり遅くに帰ってくるらしい。


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