ゆきのした。-16
「……」
「…ねえ」
「なに?」
「…飲み終わったよ」
「…台所に持ってくだけなんだからさ…」
「………」
「……はいはい」
なんだか懐かしい…と思う反面、寂しくもある。
姉ちゃんとの初めての会話は…こんなもんじゃなかったな、もっと冷めてた。
僕が無邪気に話しかけて、相手をしてくれなくてもずっとずっと『仲良くしよう』
って気持ちでいっぱいで、飽きずに幾度も話しかけて、それでようやく心を開いてくれた。
…姉ちゃんと仲良くなれた、そのすぐ後、母さんは……
リビングに戻ると、姉ちゃんは机に突っ伏して寝息を立てていた。
「仕方がないな………」
母さんは、誰よりも優しい母さんだった。
「…これ…透が描いてくれたの…?」
「うん! …へへ、お母さんと一緒に遊園地に行った時の絵だよ! 似てるかなぁ?」
「………………」
「……お母さん…な、泣いてるの?」
「………透は良い子ね…本当に…良い子……きっと将来は…ゴツァンみたいな大人になれるわ……」
「……あんまり…嬉しくないよ」
言い方が悪いけど、しっかりと飴と鞭を使い分けていた。
「……ひぅ…っく……」
「…前を向いて、ちゃんと由紀奈ちゃんに謝りなさい」
「………」
「仮にも由紀奈ちゃんは女の子であり家族なんだから、どんな理由があっても絶対に泣かしちゃいけないのよ。 ……透は、男の子でしょう? ケジメを付けないと…ね?」
「……………ごめん、なさい……」
「ぐす………うん」
「…よくできました! これで仲直り完了ね。 ……っと、安心したところでお母さんは『セキトリマン 第二十七張・悪と愛と義を貫く怪人、その名はゴツァン!』を久々に見たくなっちゃったなあ……透達も一緒に見ない?」
そしてある日突然、母さんが何故鞭だけを使う様になったのか、今でも理解できない。