ゆきのした。-14
「ほら姉ちゃん、秘密兵器!」
「…えー……」
げんなりした目でカップと僕を交互に見つめる姉ちゃん。 何が悪いのだろうか。
たまには大人の気分を味わってみたい…という好奇心から生まれた最強の秘密兵器。
それがコーヒー。 ちなみにどちらもブラックである。
「あたし…これ苦手…」
「姉ちゃんはコーヒー飲めなかったっけ?」
「違うよ…前に飲んでたのはカフェモカ。 どう見ても色と匂いが違うでしょ」
…そうだったか。
しかしカフェモカじゃ意味がない、ブラックだからこそちゃんとした意味があるのだ。
「それとこれは違うんだよ、姉ちゃん。 ブラックはカフェモカと反比例してカフェイン剤の四分の」
「長くなる?」
「………まぁ長いかな」
「…飲みます」
右手のカップをひったくられた。 穏やかじゃないなぁ。
横から小声で「小学生のくせにー」と言われたが、少し矛盾してるので
あえてツッコまない。
どうでもいいけど我ながら思った。 僕って変わり者な気がする。
…一生このままは嫌だな。
横から大声で「子供のくせにー!」と叫ばれたが、凄い矛盾してるので
あえてツッコまない。
ついでに『近所迷惑』という熟語を思い出したので注意しておいた。
ちらりと姉ちゃんを見た。 …舌を出して、恐る恐るコーヒーを舐めようとしている。
何故だかこのワンシーンが脳裏に引っかかる。
対して少しずつ飲む僕。 端から見れば、優雅な小学生って感じがする…と思われたい。
「あひゅっ!? …うぇえ…」
…なんでこうも多様な意味で期待を裏切ってくれるんだろう。
テレビの画面は真っ暗、電源は消えている。
飲み終わり退屈する僕。
冷ましながらちびちびとコーヒーを啜る姉ちゃん。
いまいち空気が重い。
眠気を吹き飛ばしたところで、やはり元気は取り戻せないのか。