ゆきのした。-13
「…や………め、だめっ!」
「わあっ!?」
寝ていたのかと思いきや、いきなり飛び起きた姉ちゃん。 何事だ?
息遣いを整え、空気を大きく吸い込み、一言。
「……もう少しで寝ちゃうところだった…気持ち良すぎるから、加減してよ…」
「え」
返答する隙も無く、再びパタリと頭を乗せてきた。
……なんという無茶苦茶な要求。 これ報われる?
よくわからないバラエティ番組が終わり、ニュースへと変わる頃、時計の短針は
完璧に北を向いていた。
実を言うと僕達は簡単に夜更かし出来る人間ではない、むしろ早寝早起きの
…エキスパートなのだ。
でも大丈夫。 この日の為に用意した秘密兵器がある!
と…取りに行く前に。
「姉ちゃん……そろそろどいてくれないかな?」
「……め…」
声が小さかったけど辛うじて聴き取れた、「だめ」…らしい。
「…言い方が悪かった。 取りに行かなくちゃいけない物があるので、どいて下さい」
「……────」
…ん? 今のは何語だろう、文字じゃ表現出来ない言葉を使ってたような…
いや…耳を澄ませばわかるはず。
「……ふにゃにゃにゃ…ふにゃふにゃふにゃふにゃにゃ」
……ふにゃふにゃしか言ってないぞ、この人。
「あのー……聞いてる? 日本語わかる? いちたすいちは?」
「にゃああ…」
おお、最初の一文字だけ離して抽出すれば正解だよ、姉ちゃん。 …悲しい。
姉ちゃんはいつから" 眠くなったら猫化 "する体質になったんだ?
「うんうん姉ちゃんはそのままでも充分かわいいから、頭をどけて下さいお願いします」
「っ……」
頬を赤らめ無言で立ち上がる姉ちゃん。
やっと対処の仕方を覚えた。 猫を手懐けるのは難しいなぁ…。
という訳で、両手に持つは二個のカップ。