ゆきのした。-11
いつもなら、少し頭を撫でられるくらいのスキンシップで済む…が、
今日は凄い、大胆…なんだよな。
僕が姉ちゃんに何かをした訳でもないし、姉ちゃんが僕に何かをした訳でもない、
当たり前だけど。
……待てよ。
これはもしかしたら、あれかな、" シシュンキ "ってやつかな。
…違うか。
所詮姉ちゃんだからね。 クリスマスだし、ちょっとした子供心が動いたんだな、きっと。
かく言う僕も子供ですが。
脱ぎ終え、浴室の扉を開けた。
…しかし…考えてなかった。 もしも本当に姉ちゃんが来たら……真面目に
怒らなくちゃいけない…よね。
難しい話だ。
そして僕の足下で何かが跳ねた。
跳ねた?
僕は驚愕した。 故にタイルの壁に頭をぶつけた、故に痛い。
「姉ちゃん!」
「今いいところ…っ!? …タオル一枚じゃなくて、ふ、服くらい着てよ…」
「それより! お風呂に虫いるって知ってただろ!? 先に言ってよ!」
「だ……だってぇ」
だってもくそもあるかー! と心の中で叫喚した。
我が家の浴室は、父さんじゃないと手が届かないところに丁度猫が
入れる(実際以前に入ってきたことがある)小さな窓がある。
無難に考えると、そこから入ってきたとしか思えない。 いや、そこしかない。
雪が降る冬の季節なのに、まだいるんだなあ。
僕は虫嫌いな訳じゃない、むしろ大好きだ。
けどいくら好きだからとは言え、不意に跳んできたら某虫博士だって驚く。
ああ、姉ちゃんは虫嫌いだったっけ。 …そのせいか。
「…………………………ん?」
コオロギを外に放してやったところで、脳に雨霰が降り注がれる。
姉ちゃんの『何か企んでるオーラ』は気持ちの問題だったということが証明された。
無性に恥ずかしくなった。 顔が燃えるように熱い。