投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

飃(つむじ)の啼く……の最初へ 飃(つむじ)の啼く…… 194 飃(つむじ)の啼く…… 196 飃(つむじ)の啼く……の最後へ

飃の啼く…第15章-16

今朝、飃の母、雪解(ゆきげ)が…亡くなった。

「かあさん?…母さん!!」

飃の悲痛な叫びで、目が覚めた。まだ確かに暖かい布団。しかし、もう彼女から言葉が、眼差しが返ってくることは無い。

眠っているようにしか見えない彼女の表情は穏やかだった。

それでも…足元ががくがくと震える。握り閉めた拳に雫を感じて始めて、自分が泣いていたことに気づいた。そう。彼女はもう目を覚まさない。



座敷に横たわる母の姿。彼はそんな母に抱きついて、悲痛な、悲痛な声で、泣いていた。

「…なんでだよお、母さん…よくなるって言ったじゃないかあ…母さん…!」



ひとしきり泣いた後、彼は火がついたように駆け出した。家の周りに集まり始めた近所の狗族たちの中に、あのいじめっ子の声を聞いたのだ。

「お前が母さんを殺したんだ!」

くんずほぐれつしながら、狼に変化したり、人間の姿に変わったりして、地面の上を転げ回る。

「お前が母さんをいじめたから!お前が…!」

弔問客の対応に忙しい父は、それを見ているだけで止めには入れなかった。

私は、そんな二人のところに駆けていった。

「飃!!」

私の厳しい声に、飃は上げていた拳を、ゆっくりと下ろす。それを見ていた子供が

「へん!今度は人間を連れ込んだのかよ!だからお前の家はおかしいんだ!」

と言った。また殴りかかろうとする飃の肩をぎゅっと抑えて、私はその子の目を見返した。数秒も掛からなかったかもしれない。その子は恐れをなしたように、すごすごと父親の元に戻っていった。

「こうやってやるんだよ、飃。ね、姉ちゃんと約束しよ。母さんが居なくったって、一人前の男になれるよね?お父さんや弟を守れるような、強い男になれるよね?」

涙と泥でぐちゃぐちゃになった飃は、拳で目をごしごし擦って、私の手をすり抜けて走っていってしまった。

「あ…待って!」

今一人になったら危ないのよ!


飃(つむじ)の啼く……の最初へ 飃(つむじ)の啼く…… 194 飃(つむじ)の啼く…… 196 飃(つむじ)の啼く……の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前