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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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The Hint Of The Storm-12

「少年。」

僕の思考を赤ん坊から引き剥がしたのは、イナサの声だった。

「少し話をしよう。」



「ご苦労であったな…。皆一同に、お前には感謝していることと思う。」

片腕を失ったイナサの、着物のすそが風にはためいた。

「お前は何故ここに連れてこられたのだと思う?」

あまりに唐突な、そして率直な問いだった。ここ数日間自分が考えてきたことを見透かされているような気がした。

「罰の…ためだと、最初は思っていました。自分が殺した人の仲間と一緒に暮らして、優しくしてもらって…自分が何をしてきたのか、わから…いや、後悔させるために。でも今は…わかりません。」

イナサは、片方の目と、義眼に見える以上のものを見るように僕の顔から目を離さなかった。

「あの赤子。」

イナサの声が低くなった。

「お前には獲物に見えるか?」

僕は初めて、彼女の目を見返した。

「…いいえ…いいえ。見えません。」

彼女は、ふ、と微笑んで言った。

「ならば守ってやれ。お前はあの出産に立ち会った。あの子の兄となってやるがいい。」

そして、言葉を失っている僕を残して、去り際に言った。

「あれは子供のころから不器用な奴だったからな…お前には厳しいことをいったかも知れぬが、あれはあれで、お前に知って欲しいのだよ…お前が見ることの出来なかった沢山のものをな。」





僕のやってくる気配に、ずっと前から気づいていたのをわからせようとするかのように、擾は元から、草むらを掻き分けてきた僕の目を見ていた。

「餓鬼は?」

その目をまっすぐに見返す。

「いないよ。」

挑戦的な僕の口調に、擾は気分を害したようだった。かなり。

「ほォ…?」

金属のビーズのついた、あの鞭に手を伸ばす。身体が覚えている恐怖に、汗が噴出した。それでも、

「あんたには渡さない。僕ももう、戻る気はないよ!」

鞭がじゃら…と、血に飢えた音を出す。いびつに歪んだそれの、鈍い輝きが僕を睨みつけているようだった。


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