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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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The Hint Of The Storm-11

「ここを押してやっとくれ…その方が楽になるからね。」

そう言って、次々に指し示された場所を必死でマッサージした。女の力では、マッサージもあまり効かないのだという…でも、これで子供に近づける。そんな思いを、この村の人たちは知らないのだろうか。例え僕を仲間だと「錯覚」しているといっても、出産にまで立ち会わせるのは度が過ぎているように思えた。



誰も何も言わなくなった。出産の際の恐ろしい痛みは、若葉のお母さんの気を遠のかせたり、また現実に引き戻したりしていた。天井から吊るされた縄はぎしぎしと音を立て、産婆の勇気付ける声と、苦しみにうめく母の声だけが家中に響き渡っていた。

先ほどまでは、みんな巣の中を歩き回る蟻のようだったのに、今では村中が、固唾をのんで産声を待ちわびていた。



障子から透けて見える明かりが強くなってきた。朝が来たのだ。

「ほら!いきんで!!」

この女性の、どこにそんな力が残っていたのだろう。そう思わせるような力強さで、彼女は大きく力をこめた。

赤ん坊の頭が見えた瞬間、そこにいた人たちの喜びが、声に出さずともひしひしと伝わってきた。そして…後は一気に、赤ん坊が姿を現した。

若葉の家を中心に、祝福のさざめきが村全体に広まった。へその緒が切られ、身体を奇麗に拭くまで、その塊はどう見ても可愛いと言えるような代物ではなかった…でも…若葉のお母さんの腕に抱かれて、安心して眠りについたその子は…僕が今まで見てきたものの中でもっとも清らかで、もっとも愛らしく…そして弱かった。日に当たったことのない肌は、柔らかい陶器が灯を宿しているように暖かく、内側からうっすらと輝いているように見える。耳には細い血管が透けて見えている。か弱いように思えるけれど、同時に全ての血管、全ての毛が、彼らの言葉で生きる意志を叫んでいるような気がした。

言葉も出ないままただ見とれている僕を、小さな目をうっすら開けて見返すその子に、お母さんは言った。

「ほうら、お兄ちゃんだよ…。」

そして、疲れきってはいるけれど、底知れぬ力を秘めたその「母」という女性は、僕に微笑んで、ありがとう。と言った。

「ぼ、僕はお兄ちゃんなんかじゃ…」と言おうとしたとき、赤ん坊が手を伸ばしてきた。僕は、ようやく僕の指を一本つかめるくらいのその手に触れた。すると、驚くほどの力で握ってきた。目を丸くする僕に、傍らの若葉が

「ほら、弟も有難うだって。」

そう言って、笑った。

僕も笑った。それは儚げで、すぐに掻き消えてしまいそうな笑いだったけど、僕は始めて、その瞬間の、なんともいえないいい気持ちを味わった。そうか、笑うって…微笑むってこういうことか。

そして、目の前に生まれた、全く新しい命。命。



そうか…これが命なんだ…。



これは偽もの?これが?これが罰だというのだろうか。



いや。いや、違う。全てが本物だ。そして、僕の本物の生というものだ。


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