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社外情事?〜気晴らしの酒と思わぬ睦事〜
【その他 官能小説】

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社外情事?〜鬱屈飲酒と意外情事〜-14

それから数刻。
「……結局来てしまった」
時計の針が昼休みを示す前にさりげなく席を立った誠司は、なるだけ急いで20階の社長に向かった。
そして今、彼はその社長室と通路とを隔てる扉の前にいる。
(ここに来るのは初めてだな…)
ふと、そんな事を思う。
ヒラ社員である誠司は普段、社長室の存在する20階には全く用がない。場所が場所なだけに、誠司自身行くつもりもなかった。むしろ敬遠していた節がある。
故に社長の姿を見たのは、入社式の時だけ。しかも遠巻きにしか見ていないから、姿や顔立ちなどわからない。わかるのは、挨拶の際に発した声の調子から、若い女性なのだろうという事だけ。
そして誠司はこれから、そのほとんど見ず知らずと言えるような人を訪ねなければならない。嫌でも気後れしてしまう。
(……でも、ここまで来てしまったんだ。行くしかない)
途中、何度か引き返しそうにはなった。しかし、立ち往生しつつ結局はここまで来てしまった。
ここまで来ておいて引き返しては、大事になった時に後悔するだろう。

――コン、コン。

意を決して、しかしおっかなびっくりに、扉を叩く。
『誰だ?』
案外早く、扉の向こうから低いながらも凛とした声が響いた。緊張しながら、扉に向かって誠司は口を開く。
「く、倉本 誠司ですっ」
『……入ってちょうだい』
急に柔らかくなる口調。穏やかさを思わせるそれは誠司に、入室を促した。
大いに気を削がれた彼は、安堵しながら「失礼します」と言って扉のノブを手をかける。
「待ってたわ」
扉を開けて中に入った瞬間、再び声がかけられる。誠司は後ろ手に扉を閉め、居住まいを正した。
「突然で悪いわね。昼休みなんかに呼び出して」
声の主は社長室の席に腰掛け、誠司に背を向けている。そのため表情を伺う事はできないが、口調はやはり柔らかいままだ。
「いえ。……それで、一体何故私は呼び出されたのでしょうか?」
再び安堵しつつ、しかし気が急いてしまい、誠司は早々に本題を切り出してしまう。それに対し声の主は、「はぁ……気が早いわね」と苦笑し、立ち上がる。
「それに、少し失礼じゃない?」
背もたれから、結い上げた髪が現れた。声の主はそのまま振り返る。
「あっ、す、すいませんっ」
機嫌を損ねた――そう思い、慌てて誠司は頭を下げる。
――すると。
「怒ってるわけじゃないの。だから顔を上げて……ほら、『誠司』君」
(……あれ?)
その響きに疑問をもつ。
(……聞き覚えがある?)
疑問を抱いたまま、頭を上げて社長に向き直る。
――そこにいたのは、フレームのない眼鏡をかけた、つり目の女性。メリハリのある体型が目立つようなビジネススーツに身を包み、何か言いたげな笑みを口元に浮かべている。
(……え?)
その笑みに、更なる疑問をもつ。
(……どこかで会った?)
無遠慮にじろじろと見つめてしまう。すると彼女は、笑みはそのままにつかつかと歩み寄る。
「焦らなくても本題にはちゃんと答えてあげるわ。……呼んだ理由は、二つ」
片手を結い上げた髪に運ぶ。
「一つは、予め伝えておきたい事があるから」
指先で、眼鏡をつまむ。
「そして、もう一つが……」
髪が解かれ、眼鏡が外された。

「……改めて自己紹介するため」

呆気にとられる誠司の前で、彼女は立ち止まった。
「私は『レイ』……霧澤 玲(きりさわ れい)。この『KIRISAWAカンパニー』の…社長よ」

思考停止。


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