飃の啼く…第14章-10
「っあ…!飃っ…!」
彼は、私の最後の長い息をキスでふさいで、自分も欲望を吐き出した。
乱暴ではなかった。痛みも、気にはならない。ただ…哀しい交わりだった。
「は…あ…」
息を切らし、まだ私と繋がったままの飃が、うつむいた顔を少し上げた。
そこからのぞく目は。まるで…太陽と月。
それでも今日は、とっても辛そうな輝き。
飃は、何も言わずに私を見つめ…そしてきつく、強く抱きしめて、
「もう少し…」
「もう少し…だけ…このまま…で…」
そういって、眠りに落ちた。
数日後、私たちはもう一度あの屋敷に戻った。
あの後急場しのぎで作った彼のお墓に、今日は花を添えるために。
「友よ…これでお前を煩わせるものは…なくなったな…」
春なのに、やけに寒い昼下がりの森で、飃は白い息を吐いた。
「ねえ…?」
「うん?」
「あの時…彼、なんて言ったの?中国語で…」
飃は、哀しげに微笑んだ。
「ああ…天運苟如此,且進杯中物(天運苟しくも此の如くんば、且く杯中の物を進めん)…」
滑らかな中国語は、私の知らない飃をまた一つ明らかにした。
「天から与えられた運命がこんなものならば…まぁ酒でも飲むことにしよう…そういう意味だ。」
そして、飃はもう一度、白い息を吐いた。
虫たちが春の足音に浮き足立ち、喜びの歌を奏でる季節。この地でだけは、その歌さえどこか…哀しげだった。