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「とある日の保健室」
【学園物 恋愛小説】

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「とある日の保健室最終話」-1

「はれ……?わらひ、はひふぁふぃふぁふぉ?」
目が覚めた……ような感覚。さっきまでなにかしていたよう……な?
「ふぁふ……?」
あれれ?呂律が回らない。
「大丈夫か?優花」
目の前には、達也。羽毛布団らしき感触がある。
「わらひ……ふぁんへふぉんふぁふぉふぉひ……」
私、なんでこんなとこに、そう言いたいのに、言えなかった。
……あ!
「ふぁふふぁ!」
がばっと慌てて起き上がる。
私は……なにをした?達也になにをした?なにを言った?
脳裏に蘇る、達也の声、私の声……。
(――彼女にして……達也……――)
(――か、彼女かぁ……。ま、しばらく付き合うか――)
「ふああぁぁぁ!ふあ!ふああ!ああぁぁぁぁ……!」
半狂乱になった私は、叫び散らかし、鞄の在処を突き止め、掴み、その部屋を出て行った。



「なんだよ、優花の奴……」
すげえ元気じゃねえか。放課後まで意識取り戻さなかったくせに。それにさっきまで息が荒かったのにな。
さっき……ぐおっ!落ち着け、俺の息子よ!ただ急に発情した優花とキスしただけじゃないか!……だけってのは、ちょっとおかしいか?ついでに交際する事になっちまったし。
「橘君」
おっと、双葉先生がお呼びだ。
分かる人には分かると思うが、ここは保健室だ。あたり一面になんか変な薬品の臭いが充満している。
ちなみに……あのあと(キス、キス、キス……)、優花は気を失ってしまった。俺の胸板の上で。「ハァ、ハァ、ハァ……」と。だから保健室に運んだ訳だが、優花の奴、お礼の1つも言わねえ。まあいい。明日たっぷり聞くとしよう。
「今から休んでいく?休んで……いくよね?」
すっげえ期待を込めた瞳で俺を見つめている双葉先生。なんでそんなしきりに訊いてくるんだ?
「いや……今日はもう帰りますよ?さっきホームルーム終わりましたし」
「えっ……あ、そうだったね……。ちょっとぼーっとしてたみたい……」
心なしか、双葉先生が残念そうに見える。ま、気のせいか?
「じゃ、さ」
不意に双葉先生は俺の傍に近付く。その顔には不敵な笑みを浮かべ。
「最後の記念にさ……」
そして俺の顔を捕らえ、
「ん……」
「!」
優しく、粘膜接触。
「ぷはっ!」
「はぁ……橘君……抱いても、いい……?」
双葉先生が急にいけない事を言い出した!止めねば!
「だ、駄目ですよ!いきなりなにを……」
「だって、この学校にいられるの、今日が最後だから」
「えっ!?」
どういう事だ……?
「ふふ……さっぱり分からないって顔してるわね。……あのね、お見合い、する事になったんだ。しかも大手企業の御曹司……。私の両親はね、共にその大手企業で幹部。だから、顔を潰すなって。これで出世が出来るとも言ってたっけ」
そんな……なんだよ、それ。意味分かんねぇ。
まるで双葉先生が出世の道具みたいじゃないか。ふざけるなとしか言い様がないぞ。
「だからさぁ……最後の思い出作り、協力してくれないかな……?」
「……俺は……」
どう答えればいいんだ?双葉先生は俺を上目遣いに見つめているというのに、俺はどう答えればいいのか分からない。


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