さぁ満月だぞ!Act.4-2
電車長かった…。
私は何年下にドキドキしてるの?
違う!これは違う!
『僕が出します!』
ドギマギしていると会計で声をかけられた。
『良い。』
『ダメです!僕がお礼したいって誘ったのに!』
『そういう事は自分で稼ぐようになってから言いなさい』
さっさと会計をすまして席に就く。
しゅんとした彼の顔を見た後お盆を見た。
凄い量のドーナツ…。
『ねぇ…それ全部食べるの?』
彼は頬張りながら
『えっ?そうですけど…あっ!食べます!?』
ポンデリングを私にずずいと差し出す。
『うっ…いらない。悪いけど甘いのちょっと…』
イチゴオレを飲む彼をしり目にアイスコーヒーを飲む私。
『…ねぇ?そんなに食べて太らないの?細いよね?』
『あー俺ラグビーやってるからもうちょっと体重増やしたいんですけど増えないんですよ。多分運動量も多いからだと思うんですけど』
『いいねぇ…』
思わず遠い目になって溜め息が出た。
『綿貫さんは何かスポーツやってます?』
『私はスノボかな。毎年冬に備えてお金溜めてる。』
『いつからやってるんですか?』
もう彼のドーナツは姿を消していた。
はやっ
『高校生の時に付き合ってる人に教わってからかな』
彼は少し間を置いて
『どんな人でした?』
と聞いてきた。
『別れてくれないか?』
始まりも終りも一方的だった。
私が初めて付き合った男は既婚者だった。
通っている高校の事務員で私が18、彼が27だった。
購買の最後のパンでもめた後結局二人で分けたんだっけ…
それから仲良くなって
初めてセックスした後に金銭を渡された時彼の顔を思い切りひっぱたいた。
彼的にはそれがツボにはまったらしい。
『君みたいな子は初めてだ』
と笑いながら言っていた。私だってこんな失礼な男は初めてだ。
でも彼が好きで仕方なかった。
付き合ってくうちにクリスマスや誕生日、イベント日に会えないのは当たり前だった。
私から連絡取ってはいけなかったしもどかしかった。
『こんなに思ってる私が嫌いなの?なんで愛してくれないの?』
なんて聞いてエゴを押し付けてヒステリックになって
『君は僕が結婚しているのを合意の上で付き合ってるんだろう?』
と言われて喧嘩になってばかりだった。
付き合って1年して彼と奥さんに子供が出来た。
別れを告げられた時は自分でも驚いたがすんなり別れを認めた。
きっとその時点で凄く惨めだったんだろう。