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カーテンと机とつぶれた気持ち
【青春 恋愛小説】

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Surprise-4

『あたし、奏人が山田さんのこと好きだって知ってた。でもそれは付き合い初めてからで、最初は気付かない振りをしたの。だけど奏人を知れば知るほど奏人の中にいる山田さんが見えてきちゃって‥‥。奏人の中にはあたしの入る隙間なんてこれっぽっちもないくらい山田さんでいっぱいなんだよ。でも奏人は優しいからきっと言い出せなかったんだと思う。だからこれはあたしから言わなきゃって、でなきゃ奏人はあたしに縛られたままになって幸せになれないって思って。駅で山田さん見かけたときも奏人ずっと立ち尽くしてた。あたしには山田さんみたいに奏人の視線を止めることはできないって思ったら、やっぱりあたしじゃなくて山田さんなんだって思った。だからさっき、奏人に早く追い掛けなって言って背中押したの。でも奏人、間に合わなかったみたいだね。』


彼女はそこまで一気に話すとオレンジジュースを一気に飲み干した。
泣いているのかと思ったらとてもすっきりした顔で飲んじゃったと可愛い笑顔を見せた。

「間に合ったよ。」

『えっ?』

私も彼女のようにすべてを話せるだろうか‥‥。

「駅で千葉君に、会った。会ったけど私は逃げ出したの。」

『どういうこと?』

「もし、欲しいものを諦めたら目の前に差し出されて、手にとってしまったらすべてが崩れ去るとしたらどうする?」

彼女はどう答えるだろう。

『うーん‥‥あたしはその前に諦めないから分かんないな。今日観た映画でね、主人公の女の人が好きな男性に“あなたが傍にいてくれるなら全てを捨てても構わない”って言ったの。あたしその台詞聞いたとき、なんていうか衝撃が走った感じ。あたしもこんな想いで誰かを好きになりたいって思ったの。だから本当に好きな人だったら、周りのことなんか気にしないで手に入れなきゃ。』

ね。と言って彼女は嬉しそうに微笑んだ。私は一言も好きな人の話なんてしていないのになんて察しのいい人なんだろう。

『あたし、ずっと山田さんが羨ましかった。正直、山田さんていつも一人でいるか結城くんといるから奏人もすぐ忘れるんじゃないかって思ってた。確かに山田さんはすごく美人だし、女のあたしでも話すのに緊張しちゃうくらいだけど、奏人の一番近くにいるのはあたしだから大丈夫って思ってた。でも今は奏人が山田さんを忘れられない理由が分かる気がする。』

私は何を言えばいいのか解らなくて黙ってしまった。おそらく彼女はまだ千葉君のことが好きなはずなのになぜこんなにも明るく振る舞えるのだろう。しかもよりによって私の前で。

「何で私の前で‥そんなに明るく話せるの‥?」

最後のほうは消え入るような声だった。

『なんでだろうね?本当はあたし、山田さんのこと大嫌いになって恨んじゃうんじゃないかって思ってたけど、さっき公園で見かけたらなんだか話してみたくなっちゃったの。でも誰に聞いてもらうより山田さんに聞いてもらえて一番すっきりした。』

そう言って彼女は恥ずかしそうに笑った。

『じゃあ、あたしもう行くね。バイバイ。』

私も帰ろうと思っていたのだが、バイバイと言われて手を振られたら見送るしかない。私はまだここにいるらしい。


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