jam! 第1話 『その日、僕に起きた出来事』-3
「本当なんですって!このままだと大変な事になるかもしれないんです!」
「あのね。具体的に目撃があるわけじゃないし、第一昨日のトラックの件は居眠り運転による事故って事で解決したんでしょ?」
「それはそうですけど…」
「もし仮にあなたを狙っている誰かがいるとしてですよ?意図的にあなたに向けて居眠りトラックを突っ込ませるなんて芸当ができると思いますか?」
トラックの運転手が犯人ならば……と考えたが、彼も運が悪ければ死んでいた。今まで姿も見せなかった奴がそこまでのリスクを犯すとは考えにくい。
「よってその石の話も植木鉢の話も不幸な事故。調査の必要はありません」
「………………」
「最近そういう不幸な事故で亡くなる方が多いんですよ。この一週間でもう四人です」
「そう……なんですか?でも何も報道とかはされてませんよね?」
「まぁ全部単独の事故として疑う余地も無く成立していますからね。単に重なっているだけで事件性はありませんから」
「でも四人も続けば……」
「どう考えても人為的なものでは無理があるんですよ、状況的に。全く証拠が無い場合、警察を動かす事はできないんですよ」
……確かに他人に信じて貰うには証拠が足りなすぎるとは思う。
…それとも、あれは本当に僕の気のせいで、単に不幸な事故だったのか?
晴れない気持ちのまま警察署を出ると、自然とため息がでた。
今から、どうしよう。
もし、僕の感じた殺意の存在が気のせいじゃないとしたら。
もう三日続いているのだ。四日目が無いなんて保証はどこにもない。もしかしたら、僕が今日五人目の死亡者として名を連ねるかもしれないのだ。
しかも日を増すごとに激しくなっている状況から考えると、もし今日何かあった場合、僕が生きている可能性はかなり低いだろう。
そんな事を考えながら歩いていたからだろうか。
気がつくと、僕は初めて見る場所に来ていた。
古そうな……もとい、誰も使ってなさそうなオンボロ廃ビルが並んでいる。
そして、その中の一つ。
レンガ造りの建物の、その二階。窓に書いてあった文字に、ふと目が留まった。
『二階堂探偵事務所』。
……探偵。
テレビや漫画などではよく見るが、実際に見るのは初めてだ。仕事は何をしているんだろう?
漫画みたいに複雑な事件なんて滅多に起きないし、仮に起きたとしても普通はまず警察に頼むだろう。
それに一般人は現場には立ち入らせてもらえないだろうし。
…やっぱり人捜しとか浮気調査とかだろうか。
その辺りがまぁ現実的な気がする。
………人捜し、か。
警察には相手にされなかったが…探偵ならどうだろうか?
ダメでもともとだ。試してみる価値はある気がする。
階段を上がると木製の古めかしいドアがあり、
『二階堂探偵事務所』
のプレートがかかっていた。
間違いない。ここだ。
ドアの横にはチャイムがある。
僕は数瞬躊躇い、……意を決してチャイムのボタンを押した。