【乙女部】―act.1―-1
『【乙女部】!?』
おずおずと彼の後について教室に入る。
すると…
―パンパンパンッ
盛大なクラッカーの嵐。
おかげで耳がキーンとなった。
そこへ追い打ちをかけるかのような、高い女の人の声。
「いやーん。かわいー!秋吉やるじゃーん!!」
声の持ち主は金髪に三つ編みの、そばかすが可愛い女の人。
ただ、見た目の印象と中身のパワフルさにはかなりのギャップを感じずにはいられないけど。
「…これで文句はないだろ」
「もっちろーん♪あっきーナイス!グッジョブ!
こんな可愛い女の子ゲットしてきてくれるなんて、期待以上」
背後から、また賑やかな声が加わった。
振り返ってみると、今度はベビーフェイスの可愛い顔に雰囲気とはちょっと違う赤髪の、まぁ話し方の雰囲気からいって、お調子者で軽い感じだろうと思われる男の人がニッコリと笑っていた。
耳には沢山のピアスをしていて、他にもアクセサリーがジャラジャラ。
パンキッシュな出で立ちに近いものを感じる。
様子を伺っていると、バチッと目が合ってしまった。
とっさに視線を逸らす。
見てた事、ばれちゃったかな?
ちょっと気まずくなって俯いていると、教室の奥から椅子をひく音がした。
それと同時に、音のする方向から、男の人の低い落ち着いた声が響く。
「…で、彼女の名前は?」
今まで、全然気が付かなかったけれど、まだ他にも人がいたのだ。
彼は本を読んでいたのか、手元には栞の挟まれた文庫の小説らしきものがあった。
黒髪に眼鏡で、いかにも真面目そう。
だけど、清潔感があって、眼鏡もなかなかスタイリッシュなものをセレクトしてるあたりが、ガリ勉ていうより秀才な感じ。
「あ〜そういえば聞いてなかったっけ?
つい興奮しちゃって。
…でも、まぁこういう場合は自分から名乗るのが礼儀ってもんよね。
って事で、わたし達から自己紹介♪
えっと…わたしは2年の芹澤 鳴(せりざわ めい)。
ナルって呼ばれてるの。よろしくー」
「はいはい!じゃあ次オレねー!
オレは2年の中津 未来(なかつ みらい)。
ぜひぜひ、未来ちゃんって呼んでね。
んじゃあさ、練習♪
ほら、呼んでみて?」
『え…えと。み…未来ちゃん?』
突然の事で、動揺しながらも何とか小さい声で呼んでみると、未来ちゃんは嬉しそうに笑い、
「よーし。よくできましたっと♪」
と言いながら、私の頭をくしゃっと撫でた。
想像以上に大きく男らしい手の感触に、意識してしまって恥ずかしくなり、顔が熱くなる。
そこへ…