【乙女部】―act.1―-2
「顔が赤いぞ…」
『…!そ、そんなことないです!』
鋭いツッコミ。
私は上ずった声で必死に否定しながら、手をブンブンと横に振った。
「…そうか、突然赤くなったからもしや熱でもと思ったのだが、それなら良い。
俺は3年の春日 衛(かすが まもる)だ」
…あれ?冷やかしたんじゃなかったのか。
確かに、考えてみればこんな真面目そうな人がそういう事する訳ないよね。
…なのに、私ったら必死に否定しちゃって馬鹿みたい。
「どう?顔と名前は覚えられた?」
『あ…はい、たぶん』
「じゃー、わたしはダ〜レだ?」
金髪三つ編みのこの人は、確か…
『ナ…ナルさん』
「はいはいはーい!じゃあオレは!?」
『未来ちゃん』
「正解!じゃーさー、この堅物くんは?」
「…堅物は余計だ」
『えと…春日さん、ですよね?』
「よっしゃ!パーペキじゃん♪
それじゃ、そろそろ自己紹介の方、よろしく☆」
そういうと、未来ちゃんは私にウインクする。
…ほんと、軽いノリの人だなぁ。
『あ…わ、私は新入生の…』
…ん?
話はじめて、ふと気付く。
何かおかしい。
今、この教室には私含めて5人。
そのうちの3人しか、私は名前を聞いてない訳で。
…そもそも、ここまで人の事を連れてきといて、名乗らないなんて失礼なんじゃないの?
自己紹介を中断して、沈黙している私をみんな不思議そうに見ている。
その視線の中には、張本人の彼もいた。
「…どうした?」
春日さんが、涼しそうな顔をしながらも心配して声をかけてくれる。
『あ…あの!私、彼の名前知らないんです!』
思わず指を差してしまった。
私が急に大声を出したせいか、みんなをビックリさせてしまったみたい…。
指を差された本人はというと、キョトンとしたまま。
「…え?え!?なに、秋吉と知り合いなんじゃないの!?」
『じ、実はさっき階段でぶつかっちゃって…それで』
「…俺が声かけて連れてきたって訳。
ほんとは、そのまま部室に行こうかと思ってたんだけど…おめーら、うるせえじゃん、最近。
人の顔見るたび、新入部員連れてこいだの、なんだのってさぁ。
だから、無理矢理きてもらったんだよ」