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「ずーっと一緒」
【ホラー その他小説】

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「ずーっと一緒」-3

「えー、夏休みも後半に差し掛かってきたわけですが……」
朝礼。つまりは校長のつまらない話だ。
と、校長はそこで一息吐いた。それからまた話し始めた。
出来れば知りたくなかった、真実を。
「えー……皆さんに、非常に残念なお知らせがあります。2年生の神谷穂奈美(ほなみ)さんが……夏休み初日に亡くなりました……。交通事故だったそうです」
(な……んだってぇ!)
俄かにざわつく生徒たち。中にはそれを知っていたのか、はたまた今聞いて相当ショックだったのか、泣きじゃくっている者もいた。
神谷穂奈美……それなりに器量良しで、頭もいい、僕の幼馴染みだ。ただ、クラスは違った。交流は続いていたけど。
(あいつ……死んだのか……。でもおかしいな。訃報はまったく届かなかった……)
そう。幼馴染みなのだから、親同士の交流もあった。特に母親同士が親友で、娘が死んだら死んだで、訃報を出すものだろうが……。
「それでは、これで私の話を終わらせていただきます」



学校が終わったら、僕は急いで神谷家へと向かった。 訃報が届かなかったのは、この際置いておこう。とにかく、線香だけでもあげさせてもらおう。
「うっ……ふう……」
「穂奈美ぃ……うぅ……」
「いい子だったのに……」
神谷家へ到着早々、何人かの女子が出てきた。全員神谷穂奈美の親友だ。
「あ……かなめだ」
1人が僕を指差し、言った。
なにか挨拶をするべきか、と、手をあげかけると、
「かなめぇ!」
別の女子が僕の胸倉を掴み上げた。 苦しい……。
「あんた!穂奈美の幼馴染みでしょ!?穂奈美の事、気になってたんでしょ!?なのに、葬式来ないって、どういう事よ!」
怒りを露にして、その女は僕に言い放った。
そうは言われても、葬式はおろか、神谷が死んだという事すら知らなかったのだ。それでどうしろと?
「放、せよ!知らなかったんだよ!葬式も、神谷が死んだ事も!」
胸倉を掴んだ手を払い、僕は本当の事を言ってやったんだ。なのに、
「嘘をつくなぁ!そんなに穂奈美の葬式に来たくなかったの!?そんなに穂奈美の死を受け入れる事が出来なかったの!?」
女は止まらない。 再び僕の胸倉を掴み、けなしてくる。
「っ……!」
反論したいのに、それ以上出来ない。いくら知らなかったとは言え、葬式にも出ないなんて、最低の幼馴染みだって気付いたからだ。
「なにかしら……」
そこに、神谷家の戸が開き、1人の婦人が出て来た。 神谷穂奈美の母親、神谷美花子(みかこ)だ。表で騒いでる僕たちが気になって、出て来たんだろう。
「あ……えと、これは……」
女がしどろもどろになっていると、
「まあ、かなめ君じゃない。……穂奈美に線香、あげに来てくれたのね……。入って」
美花子おばさんは僕を迎え入れようとしてくれたのだが、女が邪魔をする。
「ちょっと待ってください!こいつは穂奈美の葬式にも来なかったんですよ!?」
「ええ。知ってるわ」
力なくにこっと笑い、美花子おばさんは続けた。
「だって、穂奈美のたってのお願いで、訃報はわざと届けなかったんだから……」
「え……」
「神谷が?」
これには驚くしかない。神谷がそんな事を希望するなんて……僕に葬式に来て欲しくなかったんだろうか。
「さ、入って!渡すものもあるから」


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