投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

飃(つむじ)の啼く……の最初へ 飃(つむじ)の啼く…… 102 飃(つむじ)の啼く…… 104 飃(つむじ)の啼く……の最後へ

飃の啼く…第10章-5

「澱み!」



「なんだとォ…?」

夕雷も鎌を解き放つ。真っ黒な刀身が、澱みの肉を削ろうと、輝く。

ちりちりといういやな感覚が、全身を包み込んだ。

この家には結界が這ってある。しかし、本気で破ろうとすれば造作ない。ほんの時間稼ぎにしかならないのだ。

「己がまず先に出て、奴らをここから引き離す。」

誰もがその場に立ち尽くして動かない中、飃が言った。

「でも…!」

反論しかける私に、久しく見せたことの無かったあの微笑を向けた。楽しくてたまらないという、残忍な微笑。私は言葉をつぐんだ。邪魔は…出来ない。

「早く追いつけ。」



ベランダから民家の屋根に飛び移って、飃は振り向いた。自分はここだと、澱みたちに思い知らせるために。そして私にも解るくらい、殺気と妖気をみなぎらせて。

その後を、潜んでいた澱みが追ってゆく。

私は、そんな飃の姿を目で追うので精一杯だったから、夕雷が私の手を引いてくれた。



飃が戦場に選んだのは、近々大きなマンションが建つので、更地になった古い図書館の跡地だ。私たちが追いついた頃には、飃が最後の一体に止めをさしているところだった。飃はそこに結界を張った。人間がここに立ち入れないようにする結界だ。だが、澱みは別だ。

確実にしとめる。



こいつらを束ねている奴は?



現れない。



…いや。

―ゾク…と、再び悪寒が来る。近くにいる。大きさは?形状は?特徴は?全てに対応できるように、あらゆる状況を想定する。

どこからどう襲ってきてもおかしく無い。空か?地面か?それとも…


飃(つむじ)の啼く……の最初へ 飃(つむじ)の啼く…… 102 飃(つむじ)の啼く…… 104 飃(つむじ)の啼く……の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前