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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第8章-1

秋って、どうしてこんなに金色なんだろう。

夕暮れ時の道を歩きながら、私はふと考えた。今日は日曜日で、夕飯の材料の買出しを、飃と二人で済ませたところだ。沈む直前の夕日が、私の前を歩く飃の髪の毛の輪郭を輝かせている。時折吹く風は、飃のにおいを運んでくれた。

飃の村が壊滅し、弟の颯君が亡くなってもう半月と少し。今でも、悪い夢を見て飛び起きることがある。私も、飃も。それでも、私たちは極めて「普通」に振舞った。それが可能だったからではなく、そうしなければ挫けてしまうからだ。

私たちは、今でも、当たり前のように一緒に起き、一緒にご飯を食べ、一緒に稽古に励み、時に澱みを対峙し、一緒にベッドに入る。何もなかったように。

でも…一人で居るときに限って、「こんなやり方は間違っているんじゃないか」と思う。こんな・・・無理に悲しみや苦しみを覆い隠して生きていくのは。

それなのに、飃の顔を見て、良く眠れないせいで疲れた彼の目を見ると、「私が元気に振舞わなきゃ」と思うのだ。そして、そんな私を見て、飃が無理をする。

「悪循環…」

「ん?何か言ったか?さくら。」

彼は耳がいい。ほんの数歩後ろを歩く私の言葉が聞こえないはずは無い。いつもなら「何が悪循環なんだ?」と聞いてくるストレートな彼。こうして、私は二人の間の溝を感じる。最近は、特に。

「なんでもないよ!」

そして私は意識して元気な声を出す。



彼を愛しているから。



「う、ぁあ…ぅ…」

午前二時。浅い眠りに入ったり、おきたりを繰り返す私は、飃がうなされるのを今夜も…今夜も聞いた。

私が起きていることを知ったら、強がりの飃のプライドが傷つくんじゃないか。飃はめったに弱みを見せないから。

私は、寝返りを打って飃のほうに向き直る振りをして、さりげなく彼の体をゆすった。

「う……わぁ…っ!」

飛び起きた飃が、今までのことが悪夢だったと気づくと、私が寝ているのかを確かめる。私は寝ている振りをして、また飃がベッドに付くのを待つ。

私は何の力にもなれない。

愛しているのに。

口惜しくて、情けなくて…涙をこぼさないようにするために、唇を思いっきり噛み締めた。


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