飃の啼く…第5章-12
「望むか望まないかは、その時の雰囲気でわかるはずでしょ?あなたと私の間なら。」
「…わかった。」
テレビの中では、まさに「最中」に突入していた。女の人の声と、男の人の声が、部屋に響き渡る。
「う゛〜…」
飃は恥ずかしそうに身体を硬直させている。
「飃…?」
犬をなでてやるように、飃の耳の後ろをかきながら優しく問いかける。
「いいのか…?」
キスで答える。そして、テレビを消した。
長い長いキス。この数日間の、飢えや不安や、孤独を打ち消すような、激しいキスでもあった。
「きて…」
彼は、まるで羽毛の塊を抱くみたいにそっと、私をベッドに横たえた。
私の存在を確かめるように、指が肌をたどる。すっかり傷だらけになった私の肌を、この人は美しいといってくれる。
「飃…?」
前戯の必要は、無かった。とにかく、早く飃を感じたかった。
「は…っ…」
飃の腰が沈み込む。私の奥深くへと。切ない表情…いっそあなたの全てを包み込んであげられたら…。
「ぁ…っう…」
ゆっくりと、お互いが感じている波の一つ一つを味わうかのような動き。この間の、激しい乱暴な行為に対する謝罪のような。
「は…ん……ぁふ…」
抱きすくめられて、飃の足の上に乗せられる。子宮の壁に当たって…
「深…ぃ、よ…つむ…」
彼は答えなかった。ただ私を抱きしめて、口づけて、撫でて…ゆっくりとした動作の中の、性急な欲望に、身体ではなく心が反応する。
「ぁう…ん、は……飃…?」
答えない。キスの合間に、もう一度言う。
「飃…好きだよ…大好き…」
「さくら…」
背筋を優しくなぞられる。ぞくぞくという感覚が、そこから全身に広がっていく。
「はぅっ…!飃っ…きちゃ…ぅ…」
「おいで、さくら。」
「…っ、ぅ…!」
ゆっくりとしたリズムに合わせたかのような、長くて緩やかな波が、真っ白な光のように私を包んだ。聞こえてくる心臓の鼓動は、私の?それとも……
どっちだって同じなのかもしれない。
片方が止まれば…もう片方も止まるのだから。
ホテルを出たとき、夜はもうすぐ明けようとしていた。新しい一日を告げる金色の太陽は、連なるビルの隙間からこちらの様子を伺っていた。