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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第6章-1

「っく…。」
お湯が傷に染みる。15を超えてから数えるのを止めた、たくさんの傷跡。引きつった不自然な線が、身体中に刻まれている。
飃の治癒術は効くけれど、傷跡を消してはくれない。まぁ、嫁の貰い手を心配する必要はないわけだが。それでも、着替えの時には友達にも絶対に肌を見せない。

ここ最近私が急に秘密主義者になったので、部内では「男が出来たのだ」と言う噂が立っている。…嘘では無いから放っておいてるけど。
それに、たしかにキスマークもある。



「のっぞいちゃうぞ〜♪」
「ギャ〜っ!駄目駄目!!」
今日は、そんな噂の調査として(?)茜が泊まりに来ている。飃には申し訳ないけど、今夜はずっと狼のままでいて貰う予定だ。
いっひっひ、と、とても恋人には聞かせられない笑い声を残して、足音が遠ざかる。ふぅ、危なかった…。茜だってこの傷を見たら引くはずだ。私だってたまに引く。

その晩は、ゲームをしながら吼え、テレビを見ては叫び、何もしなくてもとにかくおしゃべりして、飃には若い女子のかまびすしさを存分に披露した。多分、堪能はして無かったけど。

「飃く〜ん」
茜に呼ばれた飃がびくっとする。何故か飃は茜と相性が悪い様だ。今日初めて会った時など、危うく歯を剥いて唸りそうになった程だもの。私が訝しげに飃を見ると、彼は渋々歩いて来た。
「ほんっとに大きいねぇ。」
飃を撫でながら、茜が言う。「う…うん…。」
私は、全身の毛を逆立てている飃を見ながら、ぼんやりとした返事を返した。

―確かに、人間の姿をした飃と茜を会わせることに漠然とした不安を感じたのは確かだ。


なぜ?

茜は親友の筈なのに。でも何かが私に教えているのだ。

「会わせるな」と。

そして、そういうときの感覚に従わないとどういう目にあうかは、体中の傷跡が証明してくれている。

リビングのソファで横になっている飃が、いつまでも起きていることに、その晩気づかずには居れなかった。


だが、異変が起こったのはその次の日だ。
学校から帰ったら、また人間の姿に戻った飃に逢えると思っていた。昨日の事を聞いてみる気でいたから、ドアを開けた所に、巨大な狼が座って居た時には…
「えぇっ!?」
と、玄関先で声をあげてしまった。

狼になっている時の飃とも、会話は出来る。ただ、思考が物凄く単純になるし、当たり前だけど、すごく狼っぽくなる。

近所の人に今の叫び声が聞かれていないことを願いつつ、急いで扉を閉めた。
「…なんで人間に戻らないの?」
「モドレナイ」
戸惑った。こんな経験は無い。
「何故だかわかるの?」
「……ニオイ…」
「匂い?匂いがどうかした?」
私の質問には答えず、それきり飃は黙ってしまった。言葉を探すための沈黙では無い。話したくない時の沈黙だ。


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